【*初めに*この記事は「2023年高校サッカー選手権決勝:青森山田高校VS近江高校」の試合を見ていて感じたことを記事にしたものです。どちらが優れている等を書いたものではありません。両校の勇敢な戦いぶりに多くの人が感動したと思いますし、やはり高校サッカー選手権という舞台は偉大だなと感じております。】
選手権は青森山田高校の優勝で幕を閉じました.
「青森山田のサッカーを勝ててはいるが、つまらない・反則がおおい」というように取れてしまうようなSNS書き込みなどが見られますが、そんなことはありません。
同時に、元青森山田高校サッカー部監督で現在町田ゼルビアの監督をしている黒田剛監督のサッカーも同様の指摘が多いと私は考えています。
青森山田の選手たちは厳しいトレーニングを乗り越え、ピッチ上では選手同士で鼓舞しあいつつ高校レベル屈指の判断力・技術・メンタルを駆使して高校サッカー選手権優勝までたどり着いたと思っています。
さて、ここで毎回課題になってくるのが
「勝てるサッカー」と「観ていて面白いサッカー」の両立は可能なのか?
ということです。
「勝てるサッカー」と「観ていて面白いサッカー」の両立は、日本サッカー界(特に高校サッカー選手権のようなノックアウト方式のトーナメント戦)において永遠の課題とされています。
それぞれの特徴を探ると、以下のようなキーワードが出てくるのではないでしょうか?
【勝てるサッカー】
ロングボール主体
フィジカル
セットプレー
単調な攻め
縦に速いサッカー
【観ていて面白いサッカー】
個人技
パスサッカー
ビルドアップ
システム可変
柔軟な戦術
詳しく見ていきましょう。
まず「勝てるサッカー」は、ロングボールやフィジカルを駆使した戦術が主流だと思っています。これは前線に足の速い選手やフィジカルに優れた選手を配置し、セットプレーからの得点も積極的に狙います。ボールをつなぐよりも、迅速にゴールを目指すことが優先されます。
たしかにこれであれば、自分たちが大きなリスクを負うことなくゴールを奪えそうなイメージです。
ビルドアップで自陣深くから前線ボールを運ぶことを考えること、現代サッカーではGKもビルドアップに参加することがもとめられるためゴールキーパー参加型のビルドアップでは奪われた時のリスクがかなり高いというの皆さんもお分かりではないでしょうか?
Jリーグの試合でも、自陣深くでのビルドアップに失敗しボールを奪われ失点するというのは頻繁に見られると思っています。
一方で「観ていて面白いサッカー」は、美しいビルドアップや高度な技術による連携が求められ、期それらを待されます。ボールを保持し、慎重かつ巧妙なプレーで相手を翻弄・陣地に進入するスタイルです。ここでの重要な要素は、選手たちの個々の技術と戦術理解であり、ファンタスティックなプレーが観客を引き込みます。
選手権決勝で近江高校が1点を取ったプレーが
「素晴らしい」
「完全に崩している」
と評価されるのは、この条件を満たしていたからだと私は考えています。
指導者はこの両立の難しさにいつも直面していると私は考えています。事実私も直面していますし(笑)
ほとんどの大会(とくに地区予選)では、シンプルで効果的なシステム4-4-2によるロングボール戦術が多く、勝利しているように思えます。よって、指導者としては勝利を第一に考えると上記のような戦術を取ることを優先しがちです。
しかし、上記のような戦い方が観客・さらには自分たちを魅了するような「観ていて面白いサッカーか?」と言われると「YES」とは言い切れないのが事実です。技術に重きを置くサッカーを展開するのは大事ですが勝利に結びつかなければ意味がありません。(←言い切ることは難しいですが…)
指導者は戦い方を選択する際、どちらを優先するかのジレンマに直面していると私は思っています。私自身も同様です。
勝てるサッカーの要素を強化すれば、観ていて面白いものとはなりづらく、逆もまた然りです。両方の要素を同時に追求することは難しく、時には犠牲を払う必要があります。選手たちにとっても、勝つことが最優先事項であるならば、時には地味な戦術を選択せざるを得ないでしょう。
この難しいジレンマを解決するためには、監督の戦術眼と柔軟性が求められます。適切なタイミングでどちらの要素を強調するか、そしてどの選手にどのような役割を与えるかを見極めることが必要です。両立が難しいからこそ、そのバランスを見つけ出すことが、真に素晴らしいサッカーを創り出すカギとなるでしょう。
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