【4-4-2】の強みのおさらい
*今回の4-4-2はMFはダイヤモンド型とします。
バランスが良い
サッカーのピッチは横幅が68m(公式戦の場合)ほどありますが、4-4-2のフォーメーションではMFラインとDFラインに4人ずつ配置することで、この広大なエリアを効率よくカバーしやすいとされています。攻撃面で見ても、両サイドバック(SB)が高い位置を取り、両サイドハーフ(SH)を押し上げながらビルドアップを行えば、後方ではセンターバック(CB)2人+GKで“3人”の数的優位を確保できます。いわゆる2-4-4のような形へ可変させることで、相手のプレスをかいくぐりながらビルドアップを進められる点が魅力です。
突出した選手がいなくても機能しやすい
4-4-2は、特別なドリブル能力や圧倒的なスピードを持つ選手がいなくても、連携とポジションバランスを重視することで十分に攻守を成り立たせることができます。実際、多くのプロチームだけでなくアマチュアや育成年代のチームでも取り入れられており、その汎用性の高さは「4-4-2」の大きな特長といえるでしょう。
「4-4-2」のシステムは本当に弱点がないのか?
ここまで見ると“万能”にも思える4-4-2ですが、実際にはもちろん弱点があります。むしろ世界中で採用されるがゆえに、その弱点を理解している指導者や分析担当者も多く、対策を講じられる可能性が高いともいえます。そのため、自分たちが4-4-2を使ううえでも「何をどうカバーするか」をしっかり押さえておくことが必要ですし、相手が4-4-2であれば「どこを突けば崩しやすいのか」を理解しておくことが勝敗を左右します。
4-4-2のシステムを採用し、ゾーンディフェンスで守備をするチームを多いと考えています。
ゾーンディフェンスのメリットは以下の通りです。
- スペースを守ることができる
- バランスよく守ることができる
- カバーし合える
特定のエリア(ゾーン)を担当し、味方同士が連携することで相手の攻撃を食い止めるのがゾーンディフェンスの基本コンセプトです。4-4-2は両サイドに2枚ずつ配置されることで、横幅をしっかりカバーでき、さらに中央にはボランチまたはダブルボランチが構えるため、守備ブロックを築きやすい利点があります。
しかし、長所があれば当然短所もあります。とりわけ「4バック」のシステムは、下記のような問題点を抱えやすいのです。
センターバック(CB)の守備難易度が高い
4バックでは、中央を守るCBが2人しかいません。そのため、相手が2トップで来られたり、2列目から飛び出す選手が積極的に絡んでくる場合、CB2人だけでカバーしきれないケースが出てきます。さらに、CBのどちらか一方が前に出てボールホルダーへアタックすると、後方に広大なスペースが空きやすく、連携が取れないと一瞬で決定機を許してしまう可能性が高まるのです。
「ラインから1人が抜ける」—これは守備面で非常にシビアな状況を生みます。例えば、CBが積極的に前へ出ていくと残る1人が中央をカバーしきれずに相手FWに裏を取られるリスクがあります。サイドバックやボランチが即座にスライドして空いたスペースを埋めする仕組みがないと、連動性の欠如から失点につながるシーンが頻繁に生まれるのです。
実際、4バックを採用するチームの中には、CBがやみくもに前へ出ることを避けるため「常に1人がカバーリングに専念する」「前に出るタイミングはボランチと連携して決める」などの約束事を徹底しているケースがあります。こうした決まりごとがない場合、4-4-2の安定感が一気に崩れてしまうのです。
バイタルエリアの守備が弱いと致命的
4-4-2の泣き所として、よく言われるのが「バイタルエリア」の守備です。MF4枚+DF4枚による2ラインは、理想的にはブロックを形成しやすい反面、中盤4枚が前に出すぎるとその背後、つまりDFライン・CBとの間に大きなスペースが生まれてしまいます。
このバイタルエリアを有効に使われると、相手にミドルシュートやスルーパスの起点を与えてしまい、守備側にとっては一気にピンチとなります。ダブルボランチで中央を守ろうと考えても、前線へのプレスやサイドへの寄せでボランチが動かされると、結果的にバイタルを守る人数が不足しがちになるのです。
実際、バイタルエリアを突かれるのを防ぐためには、コンパクトな陣形を常に保つことが重要です。コンパクトに保つためには、FWからDFまでのライン間距離を縮め、全体が連動して前に出たり下がったりすることが不可欠です。たとえば、中盤の選手が相手を追いかけて前に出るなら、DFラインも少し押し上げてスペースを消す、逆にDFラインが下がるなら中盤も一緒に距離感を調整するといった動きを繰り返します。
しかし、それでも相手の素早いパス回しや個人技でバイタルエリアを崩されると、4-4-2の2ラインが崩壊し、いわゆるバイタルエリアを突かれる形になってしまうのです。
GKの守備範囲が重要になる
コンパクトに陣形を保とうとすれば、当然最終ラインは高めに設定される場面も多くなります。その結果、生まれるのが裏スペースへの不安です。相手がロングボールや素早いカウンターを仕掛けてきた際、センターバックが追いつけなければ、一気に裏を取られてしまいます。
ここでカギを握るのがゴールキーパー(GK)の守備範囲です。ハイラインで戦う4-4-2の場合、GKがペナルティエリアの外でも果敢に対応できるかどうかが大きく影響します。いわゆる「スイーパー」の役割が求められるわけです。もしGKが飛び出しを苦手としていたり、判断が遅い場合、相手のロングパス1本で決定機を作られてしまう可能性も高まるでしょう。
つまり、4-4-2で守備をコンパクトにしようとすればするほど、GKが裏をどれだけケアできるかが勝敗を左右します。いくらCBやSBが連動していても、GKが後方でサポートできないならば、結局はラインを下げざるを得ず、バイタルエリアを再び相手に使われてしまう—このジレンマと常に向き合わなければならないのが4-4-2の難しさでもあります。
4-4-2の弱点まとめ
ここまで紹介したように、「4-4-2」は以下の3点が弱点の代表格として挙げられます。
- バイタルエリアの守備が崩れると致命傷
- CBの判断力と統率力が問われる
- GKの守備範囲が限られる場合、裏スペースを突かれやすい
前回も述べたように、「4-4-2」は確かにバランスの良いシステムであり、多くのチームが採用する普遍的なフォーメーションです。しかし、そのバランスが崩れたときに生じるリスクは決して小さくありません。
弱点をどうケアするか? 逆にどう攻略するか?
4-4-2を使う立場としては、上記の弱点をどうカバーするかが最大のポイントとなるでしょう。具体的には以下のような対策が考えられます。
- バイタルエリアを徹底してケアする:
ボランチとの連携を強化し、中盤が前へプレスに行くタイミングとDFラインの押し上げを連動させる。コンパクトな守備陣形を崩さないように、「チーム全体で動く」意識を徹底する。 - CBの連動を明確にする:
CB2人のどちらが前に出るか、もう一方はカバーに入るのかをはっきりさせる。サイドバックやボランチとも事前に約束事を作り、空いたスペースをすぐに埋める仕組みを作る。ラインコントロールの精度を上げるのも必須。 - GKの裏ケア能力を高める:
GKのスイーパー的役割をトレーニングし、ペナルティエリア外への対応を強化する。DF陣とGKが互いに声を掛け合い、ハイラインでも安心して守れる環境を整える。
一方、相手が4-4-2を採用しているのであれば、これらの弱点を逆手に取って攻める戦略を立てることができます。たとえば、バイタルエリアに攻撃的なMFを配置して縦パスを多用したり、CBの前後を揺さぶるような動きを繰り返したり、GKが飛び出しを嫌がるようならロングボールを積極的に放り込むのも一つの手段でしょう。
まとめ
結論として、「4-4-2」のシステムにおける主な弱点は
- バイタルエリア
- CBの動きと判断力
- GKの守備範囲
という3点に集約されます。これらを十分にケアできなければ、どんなにバランスが良いと評される4-4-2でも、一瞬の連携ミスや判断の遅れを突かれて失点につながりかねません。逆に、ここをしっかり対策しているチームであれば、安定感のある守備とな攻撃を両立できるわけです。
また、対戦相手として4-4-2に臨む場合には、この弱点を徹底して分析し、バイタルエリアを突破する形やCBを混乱させるようなアプローチ、あるいはロングボールで裏を取る展開を作るなど、相手の嫌がる攻め方を仕掛ければ自ずと勝機を得やすくなります。
4-4-2はサッカーの歴史の中で長きにわたって培われ、そして多くの実績を残してきた素晴らしいフォーメーションであることに変わりはありません。だからこそ、弱点を研究し合い、それを克服・あるいは攻略する術を練り合うことが、サッカーの戦術的駆け引きをより深く、かつ面白いものにしているといえるでしょう。今回の記事が、みなさんの戦術理解やチーム作りのヒントになれば幸いです。
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