はじめに
「相手が明らかに格上…」。サッカーにおいてこう感じる瞬間に出くわす可能性は十分あります。個々のスキルやフィジカルが優れているのはもちろん、チーム戦術も洗練されている相手を前に、「どうせ勝てない……」とネガティブになっていしまうチームも少なくありません。
しかし、サッカーは波乱が起きやすいスポーツでもあります。たとえ実力差があっても、正しい戦い方を準備し、試合中にきっちり実行すれば、番狂わせを起こすチャンスは十分に存在するのです。
今回は、「格上相手に挑むときの具体的な戦術ポイントと考え方」したいと思います。
戦術の整理――自分たちの戦い方をまず確認する
なぜ戦術の“細分化”が大事なのか
「格上が相手」となると、多くの指導者は「守備を固めるか、カウンターを中心にするか」など大まかな方針を思い描くことでしょう。しかし、漠然と「守備的にやろう」「ロングボールで狙おう」では、試合中に選手が具体的にどう動けばいいのか不透明になりがちです。そこで必要なのが、**「戦術を細分化し、整理する」**というプロセスです。
たとえば守備面であれば、
- 最終ラインはどの位置で構えるか(ハーフライン付近にするか、ペナルティーエリア前の自陣深くか)
- 奪いどころ(タッチライン際で挟み込むのか、中央へのカットインを防ぐのか)
- どこでプレスをかけるのか(高い位置か、中盤か、自陣深くか)
攻撃面であれば、
- カウンター重視なのか、あくまでも自陣からボールをつなぐのか
- セットプレー時の狙い
こうした要素を細かく分解することで、「いつ・どこで・誰が・どんな動きで」という指示を選手に具体的に伝えやすくなります。格上相手ほど細部での動きをこだわる必要があります。
自分たちのスタイルを見失わない
一方で、あまりにも相手の強さを意識しすぎると、自分たちが得意とするスタイルを捨ててしまい、逆に力を発揮できないケースもあります。つまり、「細分化」は大切ですが、同時に自分たちの長所(後述の“能力の洗い出し”で把握する)を活かす形を残すこともポイントです。
目的をはっきりする――勝つためにリスクを冒す覚悟
「勝ちにいく」のか、「引き分け狙い」なのか?
格上相手と対峙するとき、最初に明確にしておきたいのは“試合の目標”です。リーグ戦などで「勝ち点1を確保すれば良い」という状況なら、無理にリスクを冒さずにドロー狙いの戦い方を徹底するのも戦略です。しかし、ノックアウト方式や「何としても勝ち点3が欲しい」場合は、同点のまま終わる選択肢がありません。
そのため、「守りを固めてカウンターで1点を狙いにいく」「失点覚悟でも枚数をかけて得点を取りにいく」など、勝つためにはリスクを負う場面が必須という認識をチーム全体で共有しておく必要があります。
“リスクをとる”具体的な戦術プラン
リスクを冒すとはいえ、ただ闇雲に前がかりになるだけでは返り討ちに遭うでしょう。そこで、攻撃枚数を増やすなら「どのタイミングで」や「どの選手が」前線に駆け上がるかなど、きちんとしたプランが大事です。
ポイントをあらかじめ話し合い、「このリスクを許容しよう」とチームで腹を括れると、いざという時に動きが統一されやすくなります。
能力の洗い出し――本当に“すべて劣っている”のか?
得意分野を見逃さない
多くの指導者や選手が「格上」と対戦するとき、相手の長所ばかりに目を奪われ、自分たちは何もかも劣っていると感じてしまいがちです。しかし、本当にすべての面で負けているのかを考えてください。
たとえば「FWのスピードなら負けていない」「セットプレーでのキック精度はウチのほうが上かもしれない」といった形で、どこかに活路があるはずです。“対等に戦える部分”をきちんと洗い出し、当日の戦術に反映させることで、チーム全体が「自分たちにも勝ち目がある」という自信を持ちやすくなります。
逆に、自分たちの苦手部分を正直に把握することも大切です。パスワークで格上に圧倒されるなら、あえてパス勝負を捨てて縦に速い展開を狙う選択肢も出てきます。
守備力に不安があれば、最初からブロックを低めに敷いて相手の攻撃枚数を引き込んだ上でカウンターを徹底するなど、弱みを洗い出し、戦い方を変えるといった発想が可能です。
重要なのは、弱点を無理に克服しようとするのではなく、「どうフォローすれば失点を最小限に抑えられるか」という視点でプランを組むこと。格上だからこそ、闇雲に正面から打ち合うのではなく、自分たちができる形に持ち込む戦略が求められます。
「何をやられたくないか、何ならやられても良いか」を分析する
“完全に防ぐ”のは困難
格上の攻撃を完全に封じることは、現実的にはなかなか困難です。そこで、**「何をやられるのが一番嫌か」**をチームで確認しておき、「そこだけは絶対に潰す」という優先順位を明確にします。
たとえば、相手に強力なアタッカーがサイドいる場合、サイドからのクロスやカットインを徹底して防ぐ代わりに、中央からミドルシュートは多少打たせても仕方ないと割り切る。やられて困るプレーを明確にリストアップするのです。
“やられてもいい”部分の割り切り
さらに重要なのが、「やられてもいい部分はどこか」を考えること。完全に封じ込めない以上、どこかを捨てざるを得ない場面もあります。たとえば最終ラインの前でボールを保持させるだけならOKと割り切る。逆に、そこからのシュートや崩すには死に物狂いでブロックする。
このように、明確な割り切りがチーム全体に共有されていると守備の焦点がはっきりすることで、「ここだけは人数をかけて絶対に守りきるぞ」という意識が生まれやすいのです。
1試合の戦い方を徹底する――ゲームプランを明確に
“プラン”をやり抜く覚悟
格上相手との一戦では、意外と「途中でバタバタしてしまい、試合前にイメージしていた戦術を捨ててしまう」というケースが起こりがちです。そこで、**「1試合のゲームプランをやり抜く」**というマインドセットが必要になります。
もちろん、突発的な出来事で修正が必要なときは柔軟に対応すべきですが、それをきっかけに“無秩序な方向転換”にしてはいけません。
ボールを圧倒的に支配されても焦らない
ポゼッション率=勝敗ではない
試合が進むにつれ、ポゼッション率が70%対30%のような数字になることも珍しくありません。こうなると、視覚的には「相手に支配されている」と感じてしまいがちです。
しかし、サッカーはあくまでゴール数で勝負が決まります。ポゼッション率が低くても、1本のカウンターやセットプレーで得点を奪い、勝利する可能性は十分にあるのです。チームとしては「相手が回しているだけであれば、それは攻め切っていないということだ」と捉え、“見かけの劣勢”に惑わされない精神的な強さが求められます。
受け身でいい場面を設定しておく
もし相手のレベルが明らかに上で、中央突破や細かいパス回しが得意であれば、あえて後ろにブロックを敷きむやみに飛び出さない、前線はカウンター時の役割に専念するなど、極端な割り切りも一手です。
たとえば前半のうちは無失点で抑え、後半に相手が焦り始めたところで一気に攻めに転じる――というゲームプランを持つことで、長い時間ボールを回されてもチームとしては焦る必要はありません。
まとめ
格上相手に対して「勝ち目が薄い」と感じるのは当然ですが、サッカーにおいて番狂わせはしばしば起こり得るものです。今回取り上げたポイントを再度整理すると、以下のようになります。
- 戦術の細分化と整理
- 守備面・攻撃面を具体的に設定し、自分たちのスタイルも見失わない
- 守備面・攻撃面を具体的に設定し、自分たちのスタイルも見失わない
- 目的をはっきりさせる
- 勝ちにいくのか、最低限の引き分け狙いか、リスクをどこで冒すか
- 勝ちにいくのか、最低限の引き分け狙いか、リスクをどこで冒すか
- 能力の洗い出し
- 得意分野はしっかり活かし、苦手分野は割り切りかフォロー策を用意
- 得意分野はしっかり活かし、苦手分野は割り切りかフォロー策を用意
- 「やられたくない部分」と「やられてもOKな部分」を明示
- 完封は難しいからこそ、優先順位を決めて守りの焦点を絞る
- 完封は難しいからこそ、優先順位を決めて守りの焦点を絞る
- 1試合のプランを徹底し、それ以外はやらない
- ブレずに貫くことで組織的な戦いを実現
- ブレずに貫くことで組織的な戦いを実現
- ボールを支配されても焦らない
- ポゼッション率は勝敗を決定しない。割り切りとメンタルの維持が鍵
これらのポイントを押さえたうえで、格上を相手にした「ゲームプラン」を明確にし、選手全員が同じ意図で動けるよう準備することが大切です。
次に格上チームと当たる際には「どうやって突破口を見つけるか」を考え、本記事でご紹介した考え方を参考にしていただければ幸いです。
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