はじめに
2024-25シーズンの欧州サッカー界において、我々が注目すべき監督の動向の一つが、エリック・テン・ハーフ(エリック・テン・ハグ)監督のドイツ・ブンデスリーガ挑戦でしょう。
昨シーズンまでイングランドの名門マンチェスター・ユナイテッドを率いた彼が、新たに強豪バイヤー・レバークーゼンの指揮官に就任。ドイツの新天地でどのようなサッカーを披露するのでしょうか。
彼の戦術は、一つの言葉で表すならば「規律と柔軟性を両立させた、現実主義的」です。
テン・ハーフ戦術の根幹 ― 「規律」と「柔軟性」が織りなす現実主義
ベースは「4-2-3-1」― 攻守の安定を司る布陣
彼の戦術の基本となるフォーメーションは**「4-2-3-1」**です。この布陣は、各ポジションの役割分担が明確で、攻守のバランスを取りやすいという利点があります。
- 守備時: トランジションの速さと役割の明確化
- 攻撃時: トップ下の選手お(マンチェスター・ユナイテッド時代のブルーノ・フェルナンデスが象徴的)が攻撃の起点となり、前線の3人と2人の守備的MFが絡むことで、多彩な攻撃パターンを生み出せます。
しかし、彼はこの形に固執しません。相手が2トップで前線からプレスをかけてくる場合は、後方での数的優位を確保するために3バックに変更します。また、中盤の支配力を高めたいときには4-3-3へと布陣を変えるなど、試合状況に応じて最適な形を選択する戦術的柔軟性こそが、彼の真骨頂なのです。
ポゼッションとカウンターの二刀流
よりフィジカルコンタクトが激しく、攻守の切り替えが速いプレミアリーグでは、そのアプローチを現実的に修正しました。理想はポゼッションとハイプレスですが、相手が格上であったり、選手のコンディションが整っていなかったりする場合には、躊躇なくカウンター重視の戦術に切り替えます。
この現実主義的な姿勢こそ、彼が厳しい勝負の世界で結果を残し続ける理由であり、レバークーゼンという新たなクラブで、どのようなバランス感覚を見せるのかが大きな注目点となります。
攻撃戦術のメカニズム ― いかにしてゴールネットを揺らすのか?
1整備されたビルドアップ:最後方からの設計 彼の攻撃は、ゴールキーパーから始まります。特にマンチェスター・ユナイテッドで足元の技術に優れたGKアンドレ・オナナを獲得したことは、彼のビルドアップ戦術を次のレベルに引き上げるための明確な意思表示でした。
最後方から丁寧にボールをつなぎ、相手の第一プレッシャーラインを無力化することで、有利な状況で中盤にボールを届けます。3バック化を導入したのも、CBとアンカーで後方に3枚のパスコースを確保し、ビルドアップの安定性を高める狙いがありました。
2. 中盤の流動性と縦への推進力 ボールが中盤に入ると、彼のチームは一気に縦へのスピードを上げます。その心臓となるのが、トップ下やインサイドハーフの選手です。
彼らを起点に、素早く前線の選手へボールを供給し、相手の守備が整う前に攻め切ることを狙います。ユナイテッド時代にメイソン・マウントを獲得したのは、彼の卓越したプレッシング能力と、攻守の切り替え(トランジション)の局面で潤滑油となる動きを期待してのことでした。ダブルボランチを置くことで中盤の守備強度を高めつつ、奪った瞬間に素早く攻撃へと転じるための構造改革を進めていたのです。
3. サイドの活用と中央へのスペース創出 テン・ハーフ監督は、ウイングの1対1の能力を最大限に活用します。両翼に能力の高いドリブラーを配置し、大外に幅を取らせることで、相手のディフェンスラインを横に広げさせます。
その結果、中央のエリア(ハーフスペースやバイタルエリア)に必然的にスペースが生まれます。そこに攻撃を再構築するイメージです。
4. 最終兵器としての鋭いカウンター ボールを保持するスタイルを好みながらも、彼のチームが最も危険なのは、ボールを奪った瞬間のカウンターかもしれません。
特にマーカス・ラッシュフォードのようなスピードスターや、ラスムス・ホイルンドのような縦への推進力を持つCFを活かした速攻は、相手にとって大きな脅威となります。守備から攻撃への切り替えの速さと、前線の選手の走力を活かす戦術は、レバークーゼンの機動力ある選手たちとも非常に相性が良いと考えられます。
続きは明日(2025/8/4)に更新します。
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