はじめに:空間認知能力とは?
スポーツにおいて空間認知能力は【選手が自分と周囲の状況を瞬時に把握し、適切な判断を下すための重要な力】、【空間にある物の位置や形状、関係などを素早く正確に把握する能力】のことです。
この「空間認知能力」は、位置関係や動きの把握、周囲の動きに対する反応力などを含む複合的なスキルでプレーの質に直結すると考えています。
もちろんサッカーにおいても空間認識能力は非常に重要な能力の一つである考えています。この能力が高いと、飛んできたボールをうまくキャッチしたり、ヘディングをしたり、相手より早く浮き球の落下地点に入ることができるなどにつながります。
目的の位置にうまく投げる、蹴るといったパスの能力が非常に高くなります。
またサッカーのみならずバスケットボールでも瞬時にディフェンスとオフェンスの状況・距離・配置を把握してシュートやパスのタイミングを判断する必要があります。このように、空間認知能力はスポーツでのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすということは皆さん周知の事実かと思います。
空間認知能力が求められる場面とは
限定的に場面を設定すること難しいですが、サッカーで言うとオフザボール時では敵や味方の位置を把握し、自分が最適なポジションを取ることが求められます。
もちろんボールを保持した時には状況・距離・配置を瞬時に判断し、自身が運ぶのか相手に預けるのか、パス・コース・タイミング・スピードを一瞬で判断する必要があります。
空間認知能力が優れている選手は、こうした状況を瞬時に把握して適切に動けるため、プレーの質がより高まります。
空間認知能力の発達とトレーニング方法
空間認知能力は幼少期から成長期にかけて発達しやすいものの、適切なトレーニングによって大人でも鍛えられるとされています。
一般的に、空間認知能力は小学校から中学生頃までの成長期に特に発達しやすいと言われます。この時期は脳が柔軟で新しいスキルを吸収しやすいため、スポーツや遊びを通じて空間認知力を刺激することが効果的です。ボールを使った遊びやチームスポーツは、自然に空間感覚を鍛えるのに適しています。
昨今スマートフォンやタブレットの普及や、公園や空き地等で子供たちが遊ぶ機会が減っているため以前に比べるとこの能力を身につけるための環境が減少しているのではないかと感じます。であれば意図的にトレーニングの中にこの要素を加えていき空間認知能力を鍛えていく必要があると思っています。
この能力を鍛えるために私はシンプルなメニューとして「キャッチボール」や「鬼ごっこ」を行います。サッカー以外の動きがサッカーに関わってくると考えているため、特にオフ明けなどにさまざまな種目を行なってみたり、遊びの要素を取り入れたメニューをします。バスケットボールなども非常によいトレーニングになります。
後サッカー的な技術も身につけるという意味では下記のような「サッカーテニス」を行うこともしばしばあります。
選手にコートの広さや、ルールを決めさせて行う事も多いです。図のように枠を作って必ずそこで1バウンドさせないといけないなど、アイデアはさまざまです。
よくYouTubeやインスタ、TikTokなどの映像を見ると、海外ではビーチバレーのコートでサッカーバレーを行なっている映像やサッカー選手たちがテックボールを行なっている映像が出てきます。
そのくらい海外では自然と空間認知能力が備わるような環境があるのではないかなあと感じています。
日本ではまだまだこのような環境は少ないのかなという印象です。(私が知らないだけであれば申し訳ありません…。)
意図的にトレーニングの中にも入れていく必要性は感じています。これがジュニア年代など低い年齢ではさらに獲得しやすいと思いますのでぜひ何かの参考になればと思います。
空間認知能力と脳の関係
空間認知能力には、脳の「頭頂葉」「前頭前皮質」「小脳」などが関わっており、これらが協力して情報を処理しています。
頭頂葉は、外部からの視覚情報をもとに、環境と自分との位置関係を把握する働きがあります。スポーツ選手は頭頂葉の働きにより、ボールや他のプレイヤーの位置を瞬時に把握して素早く反応できるのです。
前頭前皮質は、意思決定や計画をつかさどる領域です。プレー中の判断や次の行動の選択(たとえば、ドリブルで進むか、パスを出すかなど)は、前頭前皮質の働きによって支えられています。この部分が鍛えられることで、より高度な判断力が備わり、プレーの質が向上します。
小脳は、バランスや細かな動作の調整を担い、スポーツ中の素早い動きや方向転換をサポートします。空間認知力を高めるためには、この小脳の働きも重要であり、視覚情報をもとに身体を即座に反応させる力を強化します。
近年の研究では、空間認知能力を鍛えるトレーニングが脳内の神経回路を強化し、神経の可塑性を高めることがわかっています。これは、経験を通じて神経細胞のつながりが変化し、成長する性質です。空間認知トレーニングによって神経の可塑性が高まるため、大人でも空間認知能力を向上させることが可能とされています。
まとめ
空間認知能力は、スポーツでのパフォーマンスを支える基盤であり、競技力向上には欠かせないスキルです。成長期は空間認知能力の発達に最適な時期ですが、大人になっても定期的なトレーニングを通じて向上が可能です。
紹介したトレーニング以外にも効果的なものがあれば是非共有してください。
常により良いトレーニングを探していますので!!
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