サイドラインの支配者からゲームの創造主へ――ウイングの役割変遷
ウイングと聞くとタッチライン際を疾風のごとく駆け上がり、観客の度肝を抜くドリブルで相手を置き去りにする──。そんな英雄的な姿を思い浮かべる方も多いでしょう。ウイングは、常にチームの攻撃を象徴する重要な存在であり続けてきました。
しかし、その「役割」と「求められる能力」は、時代と共に劇的な変化を遂げています。かつての専門的な突破役から、現代ではチームの攻撃戦術そのものを司るキープレイヤーへと、その地位と責任は大きく進化しました。
サイドライン際の支配者であったウイングは、いかにしてピッチ全体のゲームを創造するに至ったのでしょうか。本稿では、過去から現代に至るウイングの役割の変遷を辿りながら、現代サッカーにおいて彼らが担う多様なタスクと、戦術的なかかわりについて確認したいと思います
過去のウイング像――タッチライン際のスペシャリスト
現代のウイング像を理解するためには、まず古典的な特定の役割に特化した、いわば職人的なスペシャリストとしてのウィングを理解しましょう。
主な役割:縦への突破とクロス供給
かつてのウイングに与えられた最も重要なミッションは、タッチライン際に大きく張り、味方からのパスを受けると、縦方向へ一気に突破を仕掛けることでした。彼らの主戦場は、あくまでフィールドの両翼。そのスピードと突破力を最大限に活かすため、チームは意図的にサイドへ大きくボールを展開し、ウイングが1対1で勝負できる状況を作り出していました。そして、相手を振り切った後には、ゴール前で待つセンターフォワードへ向けて、決定的なクロスボールを供給することが主な得点パターンでした。
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