3-2-5が生み出す“現代サッカー最強の攻撃形”とは?
今、欧州トップクラブが採用する“3-2-5”とは?
サッカーのフォーメーションといえば「4-3-3」や「4-2-3-1」が代表的ですが、近年の欧州トップチーム、特にジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)やユルゲン・クロップ(リヴァプール)などのチームで注目を集めるのが、攻撃時に“3-2-5”を形成する動きです。
「3-2-5」とは一見すると「3バック・2ボランチ・5トップ」のような奇抜な布陣に思えますが、実際には試合中のビルドアップやポゼッションの過程で自然と形作られる攻撃時限定のフォーメーションです。例えば、守備時は「4-2-3-1」や「4-3-3」だとしても、攻撃へ移行した瞬間にサイドバックや中盤の選手が高い位置を取り、結果的に3-2-5に見える形になることが多々あります。
では、なぜ欧州のトップクラブがこの“3-2-5”を好んで採用するのでしょうか? 実際の試合ではどのように動きが変化し、どんなメリットを生み出すのでしょうか? 本記事では、その戦術的特徴や具体例を交えながら、この攻撃フォーメーションの“強さの秘密”に迫ります。
3-2-5が生まれるメカニズム――後方3枚と中盤2枚
攻撃時に“3バック”を形成する理由
「3-2-5」の最初の数字「3」は、攻撃において後方を3人で支える形を示しています。具体例としては、もともと4バックのチームが片側のサイドバックを高い位置へ押し出し、もう一人のサイドバック(またはボランチ)が下がって3枚を作るパターンが典型的です。また、もともと3バックを採用しているチームなら、そのまま3人を横に並べるだけで自然と“後方3枚”のビルドアップ体制が出来上がります。
こうした3枚体制の利点は、ピッチの横幅を活かしながら相手の最初のプレスを回避しやすいことにあります。サイドに開いた選手がドリブルで前進する余地を作りやすく、相手が中央を固めればサイドに優位を作れますし、サイドを警戒すれば中央にスペースが生じる。相手守備を揺さぶりやすい布陣といえるでしょう。
“2”が司る中央のオーバーロード
「3-2-5」の真ん中の数字「2」は、後方3人のすぐ上に位置する選手たち――いわゆるダブルボランチやアンカー+インサイドハーフなどの組み合わせを指します。
ここに2人が並ぶことで、以下のようなメリットが生まれます。
- 後方3枚のパス回しをサポートし、ビルドアップを円滑にする
- 相手守備を中央寄りに引き込んで、サイドを使いやすくする
- 縦パスや斜めパスを受けて、一気に前線5人へ展開する起点になる
相手が中央をコンパクトに守りたがるなら、サイドが空きやすくなりますし、サイドに寄せられれば逆に中央が空く――この“中央とサイドの二択”を突き続けられるのが、3-2-5の奥深いところです。
前線“5人”でフィールドを5つのレーンに分割
5レーンを1人ずつ確保する
今回はグアルディオラの5レーン理論をベースとした説明をします。(メソッドラボにおいてはあまりこの理論の採用はしていませんが、今回は説明のため)
サッカーではピッチを5つの縦レーン(左右ワイド/左右ハーフスペース/中央)に分けて考えるポゼッションの理論があります。“3-2-5”における「5」は、その5レーンすべてに1人ずつ配置し、相手DFを左右に引き伸ばす意図が含まれています。
- 中央(1人): 伝統的なセンターフォワードや“偽9番”が相手CBを引きつけ、ポストプレーやワンタッチパスでの連携を狙う。
- ハーフスペース(2人): 攻撃の肝となる“半スペース”にテクニカルな選手を置き、狭いエリアでのキープ力や鋭いラストパス・シュートを期待する。
- ワイド(2人): タッチライン際の広いレーンにはスピードとドリブル能力に優れたウイングや、オーバーラップを得意とするサイドバックが高い位置を取り、縦突破やクロスで相手を脅かす。
このように、ピッチの幅と奥行きを同時に使うことで、相手守備が集中しづらくなるのです。
利き足と選手特性を活かす配置
ワイドレーンで縦に仕掛けるか内側へカットインするかは、選手の利き足に大きく左右されます。例えば、右ウイングに左利き選手を置くことで内へ切れ込みやすくなり、シュートやスルーパスを狙いやすい。一方、同サイド利き足ならスピードを活かした縦突破やクロスが強みになります。
さらに、ハーフスペースには“キープ力”や“パスセンス”の高いプレーヤーを置くことで、相手DFを引きつけてから素早く逆サイドへ展開したり、コンビネーションプレーを仕掛けたりと多彩な攻撃パターンを繰り出せます。
マンチェスター・シティの好例
マンチェスター・シティでは、左サイドに右利きのジェレミー・ドクを配置し、ハーフスペースにフリアン・アルバレス(現アトレティコ)を置くような形がよく見られます。ドクがドリブルで仕掛け、2〜3人を引きつけると、ハーフスペースでフリーになったアルバレスがパスを受けてシュートへ――これが「3-2-5」による攻撃の典型的な得点パターンのひとつです。
3-2-5の攻撃と柔軟性
主なメリット
- ビルドアップの安定
後方3枚が幅をとり、中盤2枚が近距離でサポートするため、相手のハイプレスを回避しやすい。 - 中央とサイドの二択を常に演出
中盤2枚が中央を厚くしながら、相手の守備ブロックをコンパクトに寄せれば、ワイドが空く。サイドをケアすれば中央にパスを通しやすい。 - 5レーンで相手守備を引き伸ばす
前線に5人が並ぶことで、相手DFラインを横にも縦にも広げ、局所的に数的優位を作り出しやすい。
守備時の変化にも注目
「3-2-5」はあくまで“攻撃時”のフォーメーションです。守備に回った際には、4バックや5バックへと素早く形を変え、リスク管理をするチームがほとんど。特に、ポゼッションを重視する監督ほど、局面に応じた可変を積極的に行い、「ボールを失った瞬間に誰がどこへ下がるか」「ラインを何枚にするか」を綿密に取り決めています。
マンチェスター・シティだけでなく、リヴァプールやアーセナル、その他の欧州強豪クラブも同様に、攻撃と守備で数的優位を作る工夫をしているのが現代サッカーのトレンドと言えます。
まとめ
- 攻撃時に後方3枚+中盤2枚の形を作り、確実にビルドアップを行う
- 前線に5人を配置し、ピッチを5つのレーンに分割してそれぞれを有効活用する
- ワイドレーンとハーフスペースをどう使うかが鍵となり、選手の利き足や特性が大きく関係する
- 守備では4バックや5バックへ可変しながら、失点リスクを最小限に抑える
結果的に前線へ人数をかけ、サイドからも中央からも攻撃できる“3-2-5”は、相手守備を一瞬で崩す威力を秘めています。シンプルに人数をかけるだけではなく、個々の特性(利き足・ドリブル・パス能力など)を活かしてどこで仕掛けるかを明確にし、全員が連動できるかが最大のポイントです。
このフォーメーションは、現代サッカーにおける“ポゼッションの最先端”と呼ばれる可変システムの一種にすぎません。試合を見る際は「守備から攻撃へ切り替わる瞬間」にどの選手がどのスペースへ入っていくのか注目してみてください。
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