モチベーションの新たな捉え方:ホメオスタシスと未来の自分を「当たり前」にする
サッカー選手として、日々のトレーニングや試合に臨む中で、「もっと上手くなりたい」「目標を達成したい」という強い気持ちを抱いていることと思います。しかし、一方で「なかなか行動が続かない」「モチベーションが維持できない」といった壁にぶつかることもあるのではないでしょうか。
今回は、そんな皆さんの悩みを解決するヒントとして、前回の復習も兼ねた人間の根本的な特性である「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」と、それを活用した「モチベーション」の新たな捉え方について詳しく解説していきます。
この理解を深めることで、皆さんのサッカー人生における目標達成と自己成長が、よりスムーズに進むはずです。
人間は変化を嫌い、ホメオスタシスにより現状にとどまろうとする(要復習)
ここからは前回の復習ですが、非常に大事なところですので、再度ご確認お願いします。

まず、私たちが成長や変化を目指す上で、理解しておくべき人間の基本的な性質があります。それは、「人間は変化を嫌い、ホメオスタシスにより現状にとどまろうとする」ということです。
ホメオスタシスとは、私たちの体が常に安定した状態を保とうとする機能のことです。例えば、体温調節がその最たる例です。
- サウナ (100℃) にいても体温は36.5℃を保つ サウナのような極端に高温の環境に身を置いても、私たちの体は発汗したり、皮膚の血管を拡張させたりして熱を放出し、体温を平熱の36.5℃前後に保とうとします。
- 通常の環境 (22℃) では体温は36.0℃を維持 特別な刺激がない通常の環境下では、最小限の体温調節で平熱の36.0℃を維持しています。
- ビーチ (40℃) にいても体温は36.3℃を維持 真夏のビーチのような暑い環境でも、体はサウナと同様に発汗や皮膚血管拡張によって熱を放出し、体温を36.3℃前後に維持しようとします。
このように、私たちの体は、外部環境が大きく変化しても、内部環境を一定に保とうと常に働いているのです。これは生命維持に不可欠な機能であり、私たちが健康に生きていく上でなくてはならないものです。
心理的なホメオスタシスと「現状維持バイアス」
このホメオスタシスは、身体的な機能だけでなく、私たちの「心」にも強く作用します。心理的なホメオスタシスとは、私たちが慣れ親しんだ環境や状況、行動パターンを「安定した状態」と認識し、そこから逸脱することを「危険なもの」「不快なもの」として捉え、現状を維持しようとする傾向のことです。これを「現状維持バイアス」と呼ぶこともあります。
新しいトレーニングメニューに取り組む際、最初はぎこちなかったり、疲労を感じたりしますよね。これは、身体が新しい刺激に慣れようと抵抗しているのと同時に、心理的にも「慣れないことへの不快感」を感じている状態です。脳は、これまでの慣れ親しんだ状態を「安全」と認識しているため、新しい、未知の状況に対しては、無意識のうちに「やめておこう」「元に戻ろう」という信号を送ってしまうのです。
サッカー選手であれば、以下のような状況でこのホメオスタシスによる現状維持の力が働くことがあります。
- 新しい戦術への適応:監督から新しい戦術を指示されても、これまでの自分の得意なプレーや役割を変えることに抵抗を感じ、なかなか新しい動きが身につかない。
- 苦手なプレーの克服:例えば、左足でのシュートが苦手なのに、意識してもなかなか練習で使えず、結局得意な右足ばかりを使ってしまう。
- コンディション管理:食生活の改善や早寝早起きなど、身体にとって良い習慣だと分かっていても、これまでの習慣から抜け出せず、続けることが難しい。
これらの現象は、私たちの「意志が弱い」からではありません。むしろ、生命維持のために備わっている強力な機能であるホメオスタシスが働いている結果なのです。この人間の根本的な性質を理解することが、これからのモチベーションの捉え方、そして自己成長の戦略を考える上で非常に重要な出発点となります。
モチベーションとは「現状にとどまろうとする力」である
多くの人が「モチベーション」と聞くと、「やる気」や「情熱」といった、現状から理想の自分へと向かうためのエネルギーをイメージするのではないでしょうか。従来の考え方では、モチベーションとは「現状から理想へ向かう力」だとされてきました 。

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