サッカーの試合映像を分析する際、得点や失点といった分かりやすい結果だけを追っているわけではありません。優れた選手のプレーには、なぜその状況でその選択ができたのかという論理的な背景があり、同時に、改善すべき選手のプレーには、繰り返される特定のパターンが存在します。
個人分析官の重要な役割の一つは、選手自身も気づいていない、プレーの根底に潜む“クセ”を発見することです。ここで言う「クセ」とは、ドリブルのフォームやキックのモーションといった、身体的な動きの習慣だけを指すのではありません。私たちが注目しているのは、そのプレーの“裏側”にある、選手の思考や判断のパターン、すなわち「思考の習慣」です。
この「無意識のクセ」とは具体的に何を指すのか、分析官はそれをどのようにして見抜くのか、そしてなぜそれに気づくことが選手の成長にとって極めて重要なのかについて、深く掘り下げていきます。
「無意識のクセ」とは何か?
「無意識のクセ」とは、プレッシャーのかかる試合の局面において、選手が深く考えることなく、半ば自動的に選択してしまう思考や判断の傾向のことです。本人にとっては、その場の状況に応じた自然なプレーのつもりでも、客観的に映像を分析すると、特定の状況下で何度も繰り返される“再現性のあるパターン”として浮かび上がってきます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 特定の状況下で、毎回同じ選択肢を選んでしまう 例えば、相手のプレスを受けた際に、前を向いて状況を確認する前に、常に近くの味方へ安全な横パスを選択してしまう。あるいは、サイドでボールを持った時、常に縦への突破を試み、カットインや中央へのパスといった他の選択肢をほとんど考慮しない。これらは、その状況における最も安全、あるいは最も慣れたプレーを、無意識に選択している思考のクセです。
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