なぜ「個人目標」が大切なのか
「粘り強い選手を育てたい」「負けず嫌いな選手に成長してほしい」という願いは、多くの指導者や保護者が抱いているものです。しかし、実際の現場では「どのように目標を立てればよいのか分からない」「子どもにどう助言していいか迷う」という悩みが少なくありません。さらに、日本全体の風潮として「順位をつけない」「競争をあまり煽らない」という空気が強まっているため、自然と子どもたちの中から「勝ちたい」「もっと上手くなりたい」という気持ちが湧きにくい側面も指摘されています。
こうした状況下で鍵となるのが、「自分自身で設定した目標」に向かってコツコツ努力し続ける仕組みづくりです。順位や勝敗だけでなく、「個人目標の達成」という軸を持つことで、自分の成長に意識を向けることができます。さらに、これらの目標を、単に“がんばれ”の一言で押し付けるのではなく、科学的な根拠(エビデンス)をふまえた理論的なアプローチでサポートすることが重要になります。
目標設定理論(ゴールセッティング理論)の基本
ゴールセッティング理論
目標設定に関する心理学的研究の中でも、最も有名といえるのがアメリカの心理学者による「ゴールセッティング理論」です。彼らは、以下のようなポイントを示しています。
- 明確で具体的な目標があるほど、パフォーマンスが向上する。
- 目標の難易度は「少し背伸びをすれば届く」レベルが理想的。
- フィードバックの存在が、目標達成に大きく寄与する。
- **目標へのコミットメント(納得感・意欲)**がなければ、いくら良い目標を設定しても効果が半減する。
多くの実験や事例研究を通じて、目標が明確であるほどモチベーションが向上し、行動量や集中度が高まることが示されています。
スポーツ現場への応用
このゴールセッティング理論はビジネスや教育でも広く応用されていますが、スポーツ分野でも有効です。例を挙げると、
- 「1か月後の試合までにフリースロー成功率を10%上げる」
- 「次の試合で、デュアルの勝利を75%以上にする」
など、数値化や行動化ができる明確な目標を立てるだけで、選手の取り組み方が大きく変わるのです。コーチは定期的に成功率やミスの数などをチェックし、客観的なデータを用いてフィードバックすることで、選手のモチベーションを高めることができます。
SMARTフレームワークで目標をわかりやすく整理する
SMARTとは何か
目標設定のフレームワークとして最もポピュラーなのが、「SMART(スマート)」です。これは、以下の5つの要素の頭文字を取ったものとされています。
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