はじめに
一口に「4バック」といっても、4-2-3-1や4-4-2、4-3-3など、選手の特徴や監督の戦術によって前線の配置を変わります。ジュニア世代や高校年代では、守備の安定感を重視しながら攻撃の選択肢を増やしやすいシステムとして、4バックを採用し「まずはここから教える」という基準になっているとも考えられます。
今回はそんな「4バック」というシステムにスポットを当てて、そのメリット・デメリットを整理していきます。
4バックのメリット
まずはメリットから見ていきましょう。
守備の安定感
最終ラインに4人を置くことで、中央とサイド両方に対応しやすく、相手の攻撃に対して比較的バランスの取れた守備体制を築きやすいのが4バックの利点です。
特にセンターバック2枚が連携しやすく、ゾーンディフェンスを敷く基礎にもなるため、「守備の仕組みを比較的わかりやすく共有できる」という長所があります。また、攻撃参加に出たサイドバックが戻りきれない場合でも、センターバック2枚と逆サイドのサイドバック、さらに中盤の選手によるリスク管理がしやすい仕組みが作りやすいのもメリットですね。
攻撃のバリエーションが豊富
4バックを維持しつつ、両サイドバックを積極的にオーバーラップさせることで、サイド攻撃に厚みを与えることができます。近年はサイドバックの攻撃参加が重要視されており、プレミアリーグのリバプールやマンチェスター・シティなど、多くの強豪チームがこの形をベースにしています。
また、中盤の構成(たとえばダブルボランチやアンカー1枚+インサイドハーフ2枚など)によって、縦パスやサイドチェンジなど多彩な攻撃パターンを織り交ぜることが可能です。前線が複数枚いる場合(4-2-3-1、4-2-2-2など)は、ポジションチェンジも柔軟に行え、守備から攻撃への切り替え時に相手を揺さぶりやすいメリットがあります。
役割が比較的明確
重要な事ですが、選手それぞれの役割をできるだけ分かりやすくしておきましょう。4-4-2や4-2-3-1といった4バックのシステムは、ポジションごとのタスクが比較的明確化されやすいため、初期には取り組みやすいといえます。
守備でブロックを組む際にも「4枚+中盤○枚で守る」という共通認識を持ちやすいのです。前に2トップや1トップ+シャドー、中盤はボックスORダイヤモンドを置く形でも、4枚のDFラインを基軸に中盤との連携を考えていけます。
4バックのデメリット
一方で、4バックにはいくつかのデメリットも存在します。中央突破を許しやすかったり、サイドバックの上下動が負担となりがちだったり、システムがシンプルに見えて意外とハードルが高い点もあるのです。ここからは、主に攻撃面と守備面に分けて4バックのウィークポイントを整理していきます。
ビルドアップが機能しないと破綻しやすい
高校サッカーの多くが4バックを採用しているとはいえ、バランスの良さが裏目に出て「戦術が曖昧」になりがちなケースがあります。両サイドバックがどのタイミングで高い位置を取るのか、あるいはダブルボランチのどちらがビルドアップに参加するのかがはっきりしていないと、上手く前進できない場面が出てきてしまいます。
事例としては、両サイドバックが同時に高い位置を取ってしまった場合、最終ラインがセンターバック2人だけになる危険性があります。そこを相手に突かれるてカウンターを受けると、あっという間に失点につながりかねません。結局「一人が上がれば一人が残る」「ボランチやサイドハーフが空いたスペースを埋める」などの連動が必須であり、それが機能しなければ攻守ともに大きな破綻をきたす恐れがあります。
1ボランチの場合の負担増
4-3-3など、アンカー1枚(1ボランチ)で中盤を構成する形をとる場合には、その選手にかかる負荷が非常に大きくなります。
- DFラインの前のスペースを1人でカバーする
- センターバックが前に出た場合の穴埋め
- ビルドアップ時には起点となる機会が多く、疲労が蓄積しやすい
こうした状況が重なると、結果としてチーム全体のバランスが崩れやすくなります。そのため、高校サッカーなどではダブルボランチ以上で中央をカバーするケースが一般的です。戦術的自由度が広がる一方で、1ボランチのシステムは選手個々の能力が高くないと機能しないという難しい面があります。
バイタルエリアを制圧できないと致命的
4バックといえども、バイタルエリア(ペナルティエリア手前の中央部分)を相手に簡単に使われてしまうようでは苦しい展開を強いられます。特に、前線のプレスが機能せず相手のビルドアップの矢印が“中央”に集中した場合、ダブルボランチですら十分にカバーできない場面も出てくるかもしれません。バイタルエリアでフリーにボールを受けられると、危機的状況になりかねません。4バック全体のバランスが崩れ、失点に直結するケースが多くなるのです。
よって4バックが中央を必ずしも完全に固められるわけではないということ十分念頭においておきましょう。
サイドバックの上下動による負担
4バックは両サイドバックの攻撃参加が大きなメリットになりますが、それと同時に戻りの遅れがリスクとなる場面も少なくありません。守備に転じたとき、サイドで1対1の局面を作られるとサイドバックやセンターバックに負担が集中します。
またクロス対応の際に「ファーサイドのサイドバック」が高さやパワーで劣るケースが多く、ゾーンディフェンスではマークの受け渡しが曖昧になるとピンチを招きがちです。4バックで安定した守備を築くためには、サイドバックとセンターバック、そしてボランチとの連携が不可欠です。
4バックのポイントまとめ
まとめると、以下のようなポイントが見えてきます。
- バランスの良さが最大の魅力
4バックはサイドと中央を比較的カバーしやすく、攻守において安定感があるフォーメーションです。ジュニアから高校サッカーでも採用例が多く、ダブルボランチを置く形で中央を補強すればなお一層守備の堅固さを高められます。 - 明確な戦術理解が不可欠
一方で、バランスの良さゆえに戦術が曖昧になりがちです。両サイドバックの役割分担や、ビルドアップの際の配置・動き、センターバックが前に出たときの穴埋めなど、細部をチーム全員で共有しておかないと、得点力や安定した守備を発揮できず、機能不全に陥ります。 - 選手の個性と連携
1ボランチかダブルボランチかによって難易度が変わり、求められる選手の能力も異なります。アンカーを一人にしてビルドアップと守備両面を担わせる場合、その選手に相当な負荷がかかるため、チームとしてどのようにカバーするかが重要です。またサイドバックの上下動を活かした攻撃ももつろん効果的ですが、戻りが遅れた際のリスクをどう補完するかがカギになってきます。
バランスの良さを活かして安定感のある戦い方ができる一方で、中央突破を許しやすい場面や、サイドバックの負担増などのデメリットも抱えています。
- ボール保持時のビルドアップのデザイン
- サイドバックの上がり・戻りの連携
- 中盤(ボランチ)の配置と役割分担
- バイタルエリアの守り方
こうした細部まで明確化し、どのように自分たちは攻めるかを意思統一することで4バックの強みを引き出すことができます。場合によっては4-2-3-1、4-5-1や4-2-2-2に柔軟に変化させたりと、バリエーションを楽しむのも4バックの醍醐味です。
4バックが「スタンダード」として多くのチームから支持されている理由は、そのバランスの良さとアレンジの豊富さにあります。しかし、その中身を深く掘り下げると、守備やビルドアップなど、意外にもこだわらないといけない部分は多岐にわたります。
4バックの特性をしっかりと捉え、選手一人ひとりの役割を明確にしつつ、練習や試合を通して改善を重ねることが最も重要です。陥りがちな課題を意識的にケアすることで、4バックの強みを最大限に活かしたチーム作りをぜひ追求してみてください。
皆さんの何かの参考になれば幸いです。
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