「勝てるサッカー」と「観ていて面白いサッカー」の両立は可能なのか?【選手権決勝から感じたこと】

指導哲学/考え方

【*初めに*この記事は青森山田高校サッカー部、近江高校サッカー部のどちらが優れている等を書いたものではありません。両校の勇敢な戦いぶりに多くの人が感動したと思います。両校ともに本当にお疲れ様でした。】

選手権は青森山田高校の優勝で幕を閉じました.


「青森山田のサッカーを勝ててはいるが、つまらない・反則がおおい」というように取れてしまうようなSNS書き込みなどが見られますが、そんなことはありません。


彼らは厳しいトレーニングを乗り越え、ピッチ上では選手同士で鼓舞しあい確かな判断力・技術・メンタルを駆使して高校サッカー選手権優勝までたどり着いたと思っています。

さて、ここで毎回課題になってくるのが
「勝てるサッカー」と「観ていて面白いサッカー」の両立は可能なのか?
ということです。

「勝てるサッカー」と「観ていて面白いサッカー」の両立は、日本サッカー界(特に高校サッカー選手権のようなノックアウト方式のトーナメント戦)において永遠の課題とされています。

それぞれの特徴を探ると、以下のようなキーワードが出てくるのではないでしょうか?


【勝てるサッカー】
ロングボール
フィジカル
セットプレー
単調な攻め


【観ていて面白いサッカー】
個人技
パスサッカー
ビルドアップ
柔軟な戦術


詳しく見ていきましょう。


まず「勝てるサッカー」は、ロングボールやフィジカルを駆使した戦術が主流です。これは前線に足の速い選手やフィジカルに優れた選手を配置し、セットプレーからの得点も積極的に狙います。ボールをつなぐよりも、迅速にゴールを目指すことが優先されます。
たしかにこれであれば、自分たちが大きなリスクを負うことなくゴールを奪えそうなイメージです。

一方で「観ていて面白いサッカー」は、美しいビルドアップや高度な技術による連携が求められ、期待されます。ボールを保持し、慎重かつ巧妙なプレーで相手を翻弄・陣地に進入するスタイルです。ここでの重要な要素は、選手たちの個々の技術と戦術理解であり、ファンタスティックなプレーが観客を引き込みます。


Twitter(現・X)の中でも近江高校の1点を取ったプレーが
「素晴らしい」
「完全に崩している」
と評価されるのは、この条件を満たしていたからだと私は考えています。

ではここで選手目線ではなく、我々指導者はどのように考えているかを仮定してみました。おそらくですが、ほとんどの方が以下のように考えていると私は思っています。

指導者はこの両立の難しさに直面している状態です。ほとんどの大会(とくに地区予選)では、シンプルで効果的なシステム4-4-2によるロングボール戦術が多く、勝利しているように思えます。よって、指導者としては勝利を第一に考えると上記のような戦術を取ることを優先しがちです。

しかし、これが観客・さらには自分自身たちを魅了するような「観ていて面白いサッカーか?」と言われると「YES」とは言い切れないのが事実です。技術に重きを置くサッカーを展開するのは大事ですが勝利に結びつかなければ意味がありません。(←言い切ることは難しいですが…)

指導者は戦術を選択する際、どちらを優先するかのジレンマに直面していると私は思っています。私自身も同様です。

勝てるサッカーの要素を強化すれば、観ていて面白いものとはなりづらく、逆もまた然りです。両方の要素を同時に追求することは難しく、時には犠牲を払う必要があります。選手たちにとっても、勝つことが最優先事項であるならば、時には地味な戦術を選択せざるを得ないでしょう。

この難しいジレンマを解決するためには、監督の戦術眼と柔軟性が求められます。適切なタイミングでどちらの要素を強調するか、そしてどの選手にどのような役割を与えるかを見極めることが必要です。両立が難しいからこそ、そのバランスを見つけ出すことが、真に素晴らしいサッカーを創り出すカギとなるでしょう。

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