sample

【サッカー講義】首位・町田が引き分けた理由 :課題は「距離感と判断の共有」

2026/27明治安田J1リーグ第4節、水戸ホーリーホック対FC町田ゼルビアの総評をしていきます。結果は1対1の引き分け。前半28分に水戸の渡邉新太選手が先制し(真瀬拓海選手の右サイド突破から内野航太郎選手のシュートのこぼれを押し込む)、33分に町田の相馬勇紀選手が同点ゴール(ネタ・ラヴィ選手が奪ったこぼれをボックス手前から右足)。後半は両チームとも得点を奪えず、そのまま試合終了となりました。町田の開幕連勝は3で止まりましたが、4戦無敗。





この試合で光った3人

大活躍した選手は、我々の中では相馬選手です。得点だけでなく、左サイドからのドリブルやクロスで攻撃の中心となり、公式記録でもドリブル成功数5回を記録しています。そして、めちゃくちゃ成長していると感じたのは谷晃生選手です。最終ラインの背後を管理しながら、ビルドアップへ積極的に関わる姿勢は素晴らしかったと思います。また、小川航基選手が82分にテテ・イェンギ選手との交代で加入後初出場。古巣相手に約3年ぶりのJ1出場です。前線でボールを収める場面も見られました。今後の活躍に期待したいです。




課題① 前線からの守備に、中盤以降が連動し切れていない

デューク選手、テテ・イェンギ選手、相馬選手が第一列から追っても、ボランチやウイングバックの押し上げが遅れると、その背後で水戸に前向きの選手を作られてしまいます。課題は前線の追う強度ではなく、後方を含めた全体の距離感と、いつ前へ出るのかという判断の共有です。


プレスは複数の選手が同時に動いて初めて相手の時間と空間を奪えます。だから「ここだ」という瞬間を全員で共有する合図=トリガーが要る。バックパス、ロングボール処理の乱れ、遅いパス、横パス、後ろ向きの保持者 ── どれを合図にするかはチーム次第ですが、大切なのはFWが出る→MFが動く→それを見てDFラインが上がるという連鎖です。そして、トリガーとリスク管理はいつも一体。ブロックが整っていないのに前線だけが行けば、スペースを与えるだけになります。


前線は「今、行きたい」、最終ラインは「まだ下がりたい」。この気持ちのズレが、前と後ろで50m以上の間延びを生みます。解決の道具は「誰が・いつ・どこで・どうやって」奪いに行くのかという基準の設定。この試合の町田に必要だったのは走る量ではなく、その基準を全員で合わせることでした。





参考になった水戸の守備 ── 中央を閉じて、プレスをかけ直す

試合開始から15分前後までは、中盤を飛ばす長いボールと背後へのランが増え、両チームの陣形が縦に伸びる場面が見られました。全体を通して水戸は、無理にプレスを続けるのではなく、プレスを外された時にはいったんブロックを組み直し、中央を締めてから再び前へ出る判断を使い分けていました。町田のくさびのパスを中央で簡単に通させず、外へ誘導する形が徹底されていた点は、非常に参考になる守備でした。樹森大介監督も試合後、今シーズン取り組む粘り強い守備は表現できた、という趣旨の振り返りをしています。


105m×68mの芝生をすべて守ることはできない。だからチームは「どこを捨て、どこを死守するか」を共有する。守るべきはゴールで、ゴールは中央にある。だから第一原則は「中央を明け渡さない」。ブロックで中を通させなければ、ボールは自然とサイドへ押し出され、そこで初めて守備側は“奪うフェーズ”に移れる。水戸はこの順番を守り、外されてももう一度この順番へ戻っていました。

非保持4-4-2という選択肢

あくまで我々の考えですが、町田は非保持では4-4-2のブロックで守る選択肢も考えられます。ただし、ここは「非保持の守備陣形」と「攻撃時のカウンター対策」を分けて考える必要があります。

左サイドには明本考浩選手と相馬選手という、ドリブル、クロス、ゴール前への侵入ができる強力な選手がいます。左から攻撃を仕掛ける場合は、右の中村帆高選手が同時に上がり過ぎず、やや低い位置でレストディフェンスを担う。片方のウイングバックが上がったら反対側が残る、シーソーのような関係です。これは必ずしも4-4-2を意味するのではなく、リスク管理として整理できます。町田の良さは、攻撃時に3-2-5に近い形で前へ人数をかけ、相手陣地を占領して攻め切る点にあります。その強みを残しながら、ボールを失った瞬間に中央と逆サイドを守れる配置を作ることが重要です。


WBが高い位置を取った瞬間、その背後は相手にとって最もわかりやすい攻略ルートになる。だからWBが高い位置を取る時は、ボランチの1人が必ずサイドへスライドして背後をカバーし、逆サイドのWBは一段低い位置で待機するという約束事を徹底する。そして弱点は「起きてから対応する」のではなく「起きる前提で設計しておく」。レストディフェンスは残る人数だけでなく配置の質 ── 縦関係になりすぎない、横にスライドできる距離、前向きで迎え撃てる体の向き ── が問われます。





3バックの課題 ── センターバックが引き出された後、誰が埋めるのか

この試合の3バックは昌子源選手、岡村大八選手、ドレシェヴィッチ選手。外側のセンターバックが前へ出た瞬間には、中央のセンターバックが横へスライドするのか、ウイングバックが下がるのか、あるいはボランチが最終ラインを埋めるのかを明確にする必要があります。出る選手、カバーする選手、その前のスペースを埋める選手までをセットで整理しなければ、引き出された背後へ走り込まれてしまいます。水戸の先制点も、相手を釣り出すパス回しから右サイドで背後を取られた場面でした。ただ、3バックの一人ひとりは対人守備の圧力が強く、人に対して前向きに出られること自体は、この守備の大きな魅力です。


重要なのは感覚ではなく、状況に応じた明確なルール化。相手FWが足元で受けたら前のCBが潰し、もう一人がカバーする。背後へ動き出されたらラインを下げるかCB同士で連携する。釣り出されたらCBがスライドしてサイドを埋める。さらにボランチが外された時にはCBが一時的に前へ出る判断も許容する ── そうした例外対応まで整理しておく。3バックの左右は4バックのCBとは役割が違い、外のスペースをカバーしサイドへ出る広い守備能力が求められるからこそ、出た後の穴を誰が埋めるかは個人任せにできません。ここに谷選手の成長が効きます。背後を管理できるGKがいれば、CBは迷わず前へ出られます。





総括 ── スコアは動かなかった。それでも見えた課題は4つ

  1. 非保持で4-4-2を採用する場合の役割整理
  2. 前向きに奪い切るための全体の連動
  3. 水戸のように中央を閉じてプレスをかけ直す守備
  4. センターバックが引き出された後に誰がスペースを埋めるのか

書籍の結びに我々はこう書きました。個の守備力に頼るのではなく、役割・距離感・連動のすべてを共通認識としてチームに落とし込むことで、守備は最も堅くなる。今日挙げた課題はどれも選手の能力の問題ではありません。次節、この試合で見えた宿題がどう修正されているか。そこを見ると、次の試合が何倍も面白くなるはずです。

関連記事

1,480円〜/月 (無料会員の登録が必須)
過去24時間で431人が訪れました