はじめに:守備の重要性とテーマの設定
守備はどうしても地味に映りがちです。よって、トレーニングの意識が薄くなる選手もいるかもしれません。しかしながら、ハイプレスやコンパクトな守備組織を築くことで勝率を高めているチームが多いのが現代サッカーの特徴と言えるでしょう。高度な守備戦術が発揮される背景には、選手一人ひとりが“守備の基本”を理解し、チーム全体で連動している事実があります。
今回はその“守備の基本”のなかでも、特に「最初に取り組むべ重要事項」にフォーカスしています。具体的には、
- まずポジションを取ること
- 背中でコース、スペースを守る(消す)
- 「奪う」と「守る」を使い分ける
- ボールの状況をしっかり見る:次を予測する思考
これら4つが、習慣として身につけば、守備は大きく様変わりします。
なぜなら守備とは相手の攻撃を止める行為であるだけでなく、自分たちの攻撃準備にも繋がる行動だからです。
「まずポジションを取ること」の意味と背景
2.1 ポジショニングの意義
「まずポジションを取ること」と言っても、単に“自分のポジションに戻る”とか“与えられた役割を守る”という表面的な話ではありません。サッカーにおいては【どのエリア】に立つかが攻守において非常に重要です。(補足ではありますがメソッドラボでは分かりやすく理解するためにエリア別に名前をしっかりと付けています)。特に守備の局面では、自分が立つ位置によって相手のパスコースを消し、相手を前進を防ぎ、最終的にはボールを奪うチャンスを生み出すのです。
選手全員に徹底したい最初の意識づけ
理解ができていないと、守備の時に「とりあえずボールを追いかける」だけになってしまい、連動・連携ができずにずるずる崩れる=ズレが生まれることが多いです。そこで、まずポジションを取るという言葉をチーム内で浸透させるだけでも、ある程度の安定感が出ます。
- 守備の原則に則った正しいポジションを取る
- ボールへ安易に突っ込まず、最初に自分が消すべきスペースを確保する。
- 味方との連動で、パスコースを限定する。
このように、最初の動きだけでもチームとして統一感を持たせれば、意識が大きく変わります。
背中でコース・スペースを守る(消す)の習慣化
なぜ背中なのか?
聞きなれない“背中でコース・スペースを守る”という表現は、守備において非常に有効な考え方です。相手を正面から完全に潰しに行くのではなく、自分の背中側にあるスペース・相手・パスコースをブロックするイメージで立つことで、相手の選択肢を制限できます。要するに、相手がパスを送りたいコース・スペースを“背中側”で遮断するという発想です。
攻撃方向を読むための体の向き
背中でコースを消すには相手がどこを向いており、そこから自分がどこを向くべきなのかの判断が重要になります。これが習慣化されると、自分のマークする相手だけでなくそのパスコース・パスコース先の相手も同時に防ぐことができます。
“スペースを消す”という考え方
「激しいプレスから奪う」だけではなく、「相手が使いたいスペースやコースを先回りして消す」と言った守備も非常に有効です。背中でコースを守るというのは、まさに相手に“そっちのコースはないよ”と宣言するようなもの。これによって相手は回り道を余儀なくされ、攻撃スピードを落とすことになるわけです。
「奪う」と「守る」を使い分ける:タイミングの妙
全部を奪いに行くリスク
サッカーの守備でありがちなのが、「常にボールを奪いに行く」ことが美思いみ重要だと思い込み、1対1ですぐに飛び込んでかわされるケース。もちろん、積極的にプレッシャーをかけてボールを奪うのは大事ですが、前向き奪取と遅らせる守備の使い分けができないと、自チームがドンドン消耗していってしまいます。
守る(遅らせる)守備の本質
守備には「奪う」以外に、遅らせる(守る)守備があります。相手が前進できないようにブロックを形成し、パスコースやドリブルコースを消して、チームが守備陣形を整える時間を稼ぐ。これができる選手がいると、チームの失点リスクは大幅に下がります。
どこで“スイッチ”を入れるか
当然、「奪う守備」を発動するタイミングは、相手がコントロールミスをしたり、数的優位を作れた瞬間などに限られます。逆に、それが揃っていないときは**“守る守備”に切り替え、チーム全体のバランスを優先する**のが賢明です。こうした判断を選手個々ができるようになると、守備の質は一段上がるでしょう。
ボールの状況をしっかりと見る:次を予測する思考
読みの精度が守備を変える
優れた守備ができるチームや選手は、常に「このボールは次にどこへ移動しそうか?」「相手の狙いは何か?」という視点でプレーしています。守備という行動は、ある意味“相手に対してのリアクション”ですが、予測が伴っていれば限りなくアクションに近づく(こちらから積極的にしかけることができる)。つまり、相手のプレーを先読みして動くため、パスコースを塞いだり、奪いに行くタイミングが正確になるのです。
相手の得意なプレーを考慮する
相手チームや相手選手の特徴を事前に把握しておくと、守備の精度は増します。例えば、「相手の10番はドリブルでカットインを好む」「相手のSBはタッチライン沿いにオーバーラップする癖がある」などを頭に入れておけば、自分たちの守備の方法がより明確になります。
チーム全体で予測力を高める仕組み
個々が予測力を持っていても、チームとして連動できなければ穴が生まれます。よって、コーチは練習メニューの中で**「相手のパスパターンを観察し、どこを消すか素早く判断する」**といったゲーム形式の練習を多く取り入れるのも効果的です。繰り返しのシミュレーションが、実戦での守備連動を高めます。
これらが習慣化されると守備が劇的に変わる!
これまで述べてきた、
- まずポジションを取る
- 背中でコース・スペースを守る(消す)
- 奪うと守るを使い分ける
- ボールの状況をしっかり見る:次を予測する
これらを習慣化するだけでも、チームの守備は劇的に変わります。何となく「ボールに突っ込む」「常に奪いに行く」から脱却し、相手の攻撃を制限し、組織的に奪い、攻撃に転じるというプロセスを再現性高く実行できるようになると考えています。
サッカーは攻撃だけでなく守備自体もかなり高度化していますが、その土台となるのはあくまで「自分が立つ位置と体の向き」「相手とボールの動きを読む力」、そして「チーム全員が意思統一」(それぞれの役割を達成する)があれば、たとえ個の能力に差があっても組織として強固な守備を築けるのです。
今回の記事が皆さんの参考になれば幸いです。
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