はじめに:なぜ「判断」がサッカーのすべてなのか
ピッチ上でボールを持っている時間は、90分間のうちわずか数分に過ぎません。しかし、ボールを持っていない時間も含め、選手は絶えず脳内で「次の一手」を選び続けています。 「パスかドリブルか」「寄せるか待つか」「走るか止まるか」。 この連続する分岐点において、瞬時に最適解を選び取る能力こそが「判断力」であり、現代サッカーにおける最も重要なスキルセットと言えます。
しかし、指導現場では「判断しろ」「考えろ」という言葉だけが先行し、肝心の「何を基準に判断するのか(判断材料)」や「どうすれば早く判断できるのか(プロセス)」が選手に手渡されていないケースが散見されます。基準なき判断は、ただの「迷い」や「当てずっぽう」に過ぎません。
今回は、サッカーにおける「判断」を論理的に解明し、正しい決断を下すために不可欠な「原理原則」を脳にインストールするための前編です。
判断のスピードと質を決定づける4つの前提要素
原理原則(判断基準)の話に入る前に、まずプレーヤーとしての「判断を実行するための土台」が必要です。どれほど正しい理論を知っていても、以下の4つの要素が欠けていれば、ピッチ上でそれを表現することはできません。判断とは、脳内だけで完結するものではなく、実行されて初めて意味を持つからです。
1. 情報収集力(判断材料の確保)
判断とは、入力された情報に対する出力作業です。入力(インプット)が少なければ、正しい出力(アウトプット)は不可能です。 ここで求められるのは、漫然と「見る」ことではなく、意図を持って「観察(観る)」する能力です。
- 味方の位置と身体の向き
- 相手の守備システムの穴
- スペースの有無 これらを、ボールを受ける前(オフ・ザ・ボール)の段階で首を振り、情報をスキャンしておく必要があります。情報収集力が高い選手は、ボールを受けた瞬間に「すでに選択肢が決まっている」ため、外からは判断が速いように見えるのです。
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