選択肢としての可変システム
サッカーの戦術に関しては様々なアプローチがあると考えています。伝統的な4-4-2のようなオーソドックスな布陣から、4-3-3、3-5-2など、中盤やサイドの役割、より攻撃的な要素を強調したシステムまで多岐にわたります。そのなかで、「試合中に意図的にシステムが変化していく」という可変システムが注目を集めています。試合前のスタートポジション(例えば4バック)とは別に、ゲームの状況を見ながら3バックに変化するなど、選手の配置を能動的・意図的に書き換えていくスタイルです。
そもそも、サッカーのフォーメーションは選手の守備と攻撃の役割分担の初期設定と言えます。しかし、実際の試合は常に流動的であり、固定された形・ポジション・立ち位置でプレーすることはほとんどありません。相手がプレスを強めれば後ろに人数をかける必要があり、相手のラインが下がってくれば今度は前に人数を多くかけても良い。こうしたシーンごとの最適解を選手が常に探り判断し、ピッチ上で自然に「システム」が変化していくことは、今やどのチームでも当たり前になりつつあります。
ただ、最近の可変システムは、明確に「3バックと4バックを行き来する」あるいは「中盤の枚数を状況に応じて増減させる」といった、チーム全体の意図が反映されるような“ハッキリと変化がある”のが特徴です。そこには明確な狙いがあり、守備時と攻撃時、あるいは相手がどのようにプレスをかけてくるかによってシステムを一つの武器・戦術として柔軟に使い分けることで、相手に的を絞らせないことを狙っているのです。
しかし、こうした可変システムにはメリットデメリットが存在します。原則を誤ったり、選手に対して意図を共有できていないと、かえって混乱を招くリスクがあります。そこで今回は、可変システムがもたらすメリットとデメリットを整理しながら、その本質や取り組む上でのポイントを探っていきます。
可変システムのメリット
可変システムの最大のメリットは、試合中に配置を変えることで“数的優位”や“スペース・ズレを生み出せる”点にあります。ここでは代表的なメリットについて、順を追ってみていきましょう。
相手にプレスの的を絞らせない
相手は「どこにプレスをかけるべきか」「自分が誰をマークすべきか」ということを瞬時tに判断しなければなりません。しかし、可変システムで選手のポジションが流動的に変わると、相手としては自分のマークを見失いやすくなります。
例えば、最初は4バックの形を取りながら、サイドバックが前に出て攻撃に参加し、実質3バックとなる場面も出てくる。すると相手のウイングはどこまで戻るべきか、あるいは中盤の選手がサイドをカバーするべきか一瞬で考えなくてはならず、守備側にズレが生じやすいのです。そういったズレをビルドアップで突ければ、自然とスペースが生まれ、攻撃をスムーズに進められます。
相手のプレスの人数を見て確実に前進できる
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