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  4. 【サッカー講義】「戦術があるから判断が育つ」という考えは誤っているのか?

【サッカー講義】「戦術があるから判断が育つ」という考えは誤っているのか?

2025 12/17
理論/TRメニュー 戦術/戦略 指導哲学/考え方
2025年12月17日

――“教え込む”指導から、“環境”で育てる指導へ――

「戦術があるからこそ、選手の判断が育つ」と我々は考えています。

確かに、戦術的な枠組み(フレームワーク)は、選手にプレーの方向性を示し、チームとしての共通理解を育むために不可欠な要素です。しかし、この言葉を「戦術を先に覚えさせれば、自然と判断力が後からついてくる」と解釈してしまうと、そこには大きな落とし穴が待っています。

今回は、この指導現場に蔓延しがちな誤解を丁解決しながら、サッカーにおける「判断力」が本来どのようにして育まれるのかを追求していきます。






目次

戦術は判断を育てるなのか?

まず、「戦術」というものが持つ役割を整理しましょう。戦術には主に二つの側面があります。

  1. 状況を整理するためのフレーム
  2. 行動を制限・誘導するためのルール

このフレームがあることで、選手はカオスなピッチ上で「どのような考え方をすればよいか」という指針を得ることができます。つまり、戦術とは選手の思考を整理し、プレーの方向性を明確にする「地図」のような役割を果たします。

では、その「地図」を持っているだけで、選手の判断力は育つのでしょうか?

答えはNOです。

どれほど精巧な地図を持っていても、目的地へ辿り着く力(判断力)は身につきません。同じように、戦術という枠組みを知っていても、判断を伴うリアルな環境・トレーニングで試行錯誤を繰り返さなければ、真の判断力は育たないのです。





判断力は戦術そのものではなく環境によって育つ

判断力とは、机上の空論ではなく、ピッチ上の現象によって磨かれます。具体的には、以下の3つの要素が揃った時に初めて育ちます。

  1. 不確実な状況にプレーこと
  2. その状況下で、自ら決断すること
  3. 判断の結果(成功・失敗)をフィードバックとして受け取れること

これら3つの要素は、戦術そのものから生まれるのではなく、「練習環境」や「仲間」「強度」の設計によって生まれるものです。つまり、判断力の育成において、戦術はあくまで「材料の一つ」であって、「主体」ではないのです。





戦術を「教え込む」だけでは判断が止まる理由

多くの指導現場で陥りがちなのが、「戦術を覚える → 動きを覚える → 判断が止まる」という逆のサイクルです。なぜ、良かれと思って教えた戦術が、選手の判断を停止させてしまうのでしょうか。

1. 戦術が「正解」を作ってしまうから


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「この状況ではここに動く」という“正解の手順”を先に与えすぎてしまうと、選手は目の前の状況(相手やスペースの変化)を見なくなります。脳が観察をスキップし、型の再現に頼ってしまうからです。

2. 戦術を守ることが目的化するから

サッカーの目的は相手に勝つことですが、戦術指導が強すぎると「監督に言われた通りに動くこと」が目的化してしまいます。本来、相手や状況に応じて最適解を探すべき場面で、主体性が消え、指示待ちの選手になってしまいます。

3. 戦術は変化に弱いから

サッカーは不確実性のスポーツです。相手の配置、プレッシャーの強度、ピッチ状態、味方のミス──こうした「変化」が一つでも加わると、事前に覚えた戦術パターンは崩れます。判断の土台がない選手は、パターンが崩れた瞬間に「どうすればいいか分からない」という思考停止に陥ります。






正しい順番は「判断 → 戦術」

こうした誤解を避けるために判断 → 戦術」という順序が重視されています。

  1. まず状況を観る力と選択する経験を積ませるゲーム形式、制限付きのトレーニング、少人数のグリッドなど、選手が自ら判断せざるを得ない環境に置きます。
  2. その過程で生まれたプレーを言語化=戦術化する選手が感覚的に行った良いプレーに対し、「今の動きがチームとして大事だね」「それが『ライン間』だよ」といった形でラベリングします。
  3. 判断のベースが出来た選手に、戦術を載せていく自ら判断できる土台があって初めて、戦術はプレーの質を高める付加価値として機能し、深い理解に繋がります。

戦術が判断を育てるのではありません。判断という土台があるからこそ、戦術という高度な概念が理解でき、活用できるのです。





戦術はツール

戦術は、判断そのものを生み出すエンジンではありません。あくまで判断の「言語化ツール」です。

  • なぜそこにパスを出したのか?
  • なぜそのポジションを取ったのか?
  • なぜそのタイミングで動いたのか?

その理由を他者に説明したり、自分で納得したりする際に、戦術用語や概念が必要になります。つまり戦術とは、プレーの「結果」を説明するためのものであり、プレーの「原因(判断力)」そのものを育てるものではないのです。





戦術先行型の育成が抱えるリスク

判断の土台がないまま戦術を先行させると、以下の2つの大きなリスクを抱えることになります。

  • 状況の変化に対応できない選手が増える決められた動き(パターン)に依存するため、想定外の事態への対応力が育ちません。
  • 自律的な選手が育たないベンチからの指示がないと動けない、試合中の修正が自分たちでできないチームになります。このタイプのチームは、相手に対策されると一気に機能不全に陥ります。




まとめ:戦術は重要。だが「戦術が判断を育てる」は誤解である

まとめです。

  • 戦術は選手の思考を整理する道具である
  • 判断力は戦術ではなく“環境”によって育つ
  • 正しい指導の順番は「判断(経験)→ 戦術(整理)」
  • 戦術を先に覚えさせると、思考停止に陥りやすい

したがって、「戦術があるから判断が育つ」という考えは、育成の順序としては誤解を含んでいます。本質は、判断力があるからこそ、戦術が活きるということにあります。

近年、一方的な「戦術伝達」から、選手が自ら学ぶための「環境デザイン」へとシフトしています。その変化の意味を深く理解できたとき、選手育成とチームづくりの質は劇的に向上するでしょう。

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