新年という節目と「やる気」の落とし穴
新年を迎えるとともに、多くの方が新たな目標を立てていることでしょう。ダイエットの成功、資格の取得、人によって目指すところは異なりますが、新年という明確な区切りが行動意欲を刺激するのは事実です。しかし、そうして意気込んだ目標がなかなか続かない、あるいは三日坊主で終わってしまったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
よく言われるのが「やる気が出ないから行動できない」という言葉です。確かに、目標が達成できない一因として「やる気の欠如」が挙げられるケースは少なくありません。ただ、「やる気が湧かない」「やる気を失ってしまった」と感じると、その段階で行動がストップしてしまい、結果として目標が遠のいてしまうわけです。年の初めに立てた目標がわずか数週間、あるいは数日で立ち消えになってしまうことを考えると、「やる気に依存する」アプローチはどうしても脆弱と言わざるを得ません。
本記事では、「やる気」だけに頼らず目標を達成するための具体的な方法、そしてその背景にある考え方についてご紹介します。新年を迎えた今こそ、もう一度自分の目標に向き合い、確実に前進していくためのきっかけになれば幸いです。
やる気と行動の矛盾—なぜモチベーションだけでは続かないのか
「やる気」とは、確かに人の行動を起こす上で大きな要素には違いありません。しかし同時に、やる気というものは常に変動する性質をもっています。例えば、急にモチベーションが高まって大きく行動を開始しても、翌日には落ち込んでしまったり、数日後には別のことに興味が移ってしまったり。そうすると、結果的に行動も継続できず、何らかの目標を達成する前に失速してしまうことになります。
一度高まったやる気が「いつか切れる」のは、自然界の法則とも言える「上がったものは必ず下がる」という現象に通じます。感情やエネルギーの波は一定ではなく、どんなにカフェインやサプリメントに頼って一時的に高めようとしても、時間が経てばいずれ落ち着いてしまうのです。その波に大きく左右される生き方をしている限り、目標達成が長い道のりになればなるほど、モチベーション頼みの方法ではゴールにたどり着きにくくなります。」
このように、「やる気に依存する」やり方には限界がある一方で、日常生活を見渡してみると、モチベーションなど気にせず行動できている場面も多いはずです。例えば、会社に遅刻しそうなとき。電車に間に合わないかもしれないと感じた瞬間、私たちは無意識に全力で駆け込みますよね。この行動には「やる気」はまったく関係ありません。その背景には、「電車に乗り遅れてしまう」という分かりやすいリスク、あるいは「間に合うためには今走らなければならない」という切迫感が存在し、行動と目標の間に明確なギャップがあるからです。
ギャップをつくり、埋めるプロセスに意識を向ける
やる気に関係なく行動できるのは、「目標と現状とのギャップ」が明確であり、それを埋める必要性が強く感じられるからです。前述の電車の例でいえば、「今走らないと間に合わない(=目標)」「実際の時間や距離」(=現状)が頭の中で自動的に計算され、その差を埋めるために行動が引き起こされます。
この「ギャップを明確にする」という考え方は、あらゆる目標達成においても有効に機能します。自分の立てた目標を、ただ「資格を取りたい」「痩せたい」という抽象的な表現で終わらせるのではなく、「○年○月までに、このような勉強を、1日○時間行うことで合格点を狙う」「あと○キロ減らしたい。そのために1日○分運動し、食事は何をどれだけ抑えるか」といった形で具体化するのです。
ポイントは、この「具体化」によって“実際に自分が行動しなければならない理由”をよりクリアに把握できるようになるところにあります。数字や期間を盛り込み、いつ・どこで・だれが・どのように・どんな方法で行うのかを明確にしていくことで、「ただやる気があるから動く」のではなく、「これを達成するために、今これをやる必要がある」と感じられるようになるのです。
具体的なアクションプラン:目標とギャップを使いこなす
目標を書き出す(解像度を高める
まずはノートやスマートフォンのメモ機能など、何でも構いませんので、自分の目標を「いつ・どこで・だれが・どのように・どんな方法で」実行するのかまで具体的に書き出してみましょう。例えば、英語力を伸ばしたいのならば、「2025年12月までにTOEICで800点を取る。そのために、平日の朝7時から7時30分まで自宅のリビングで単語の暗記をし、週末はオンライン英会話を1時間受講する」といった具合です。このように明確化することで、現実味が増してきます。
現状とのギャップを計る
次に、その理想像と今の自分との間にどの程度の差があるのかを可視化します。たとえばTOEIC 800点が目標なら、現在のスコアはいくつなのか、あるいは受験したことがないならば模擬試験や問題集で客観的に推定点数を出すなどして、数値化できる形で知っておくのです。その差が大きいほど「今のままではまずい」という危機感につながります。この“危機感”こそが、やる気とは無関係に行動を促す大きな原動力になります。
達成した瞬間を五感で想像する
人間の脳は、イメージと現実をはっきりと区別できないと言われています。だからこそ、達成した瞬間を、映像・音・感触など五感をフル活用してリアルに想像してみましょう。具体的なシーンを描き、「そのとき自分はどんな場所にいて、何をしているのか、周囲の人は誰で、どんな声をかけてくれるのか」までイメージできると効果的です。イメージをリアルにすればするほど、脳の中では「それが当たり前になる」ため、行動をサボろうとすると違和感を覚えるようになります。
アファメーション(自己暗示)を行う
アファメーションとは、自分自身に前向きな言葉を繰り返し語りかけることで、潜在意識に働きかける方法です。例えば「自分はTOEICで800点を取る英語力を身につけた」「自分はやればできる人間だ」といった肯定的な表現を声に出す、もしくは文字にして目につくところに貼るなどして、意識を刷り込んでいくのです。これは一種の催眠術のようなものですが、バカにできない効果があります。自己イメージが変わることは、行動を継続するための大きな支えになってくれるのです。
ハードルが高いと感じたら目標の半分にする
あまりにも高い目標を掲げてしまうと、その差が大きすぎて早々に気持ちが折れてしまうこともあります。その場合は、掲げた目標の半分、もしくはもう少し低いラインからスタートしてみるのも一つの方法です。継続的に達成感を得ながら、スモールステップで確実に登っていくほうが、結果的には遠くまで行けることが多いのです。
やる気に頼らず、ギャップと具体化で未来をつかむ
ここまで述べてきたように、目標が達成できない主な原因は「解像度が低い」ことと「達成した自分をリアルに想像できない」ことにあります。漠然とした目標であれば、どこをどう改善すればよいかが曖昧になり、結果として行動しづらくなってしまうのです。また、行動を起こしたとしても、イメージできない未来に向かって進むのは意外とストレスがかかります。人は自分が理解できないもの、想像できないものに対しては腰が重くなりがちなのです。
一方で、電車に駆け込むときのように、「目標と現状のギャップ」がはっきりしていれば、やる気は二の次であり、自然と行動に結びつきます。明確なゴールとデッドラインがあり、さらに行動せずにはいられないような切迫感があれば、人は誰でも動けるのです。ですから、「いつかやる気が出たら始める」のではなく、「やる気は関係なくとも、この差を埋めるために行動する」という仕組みを自分の中で作り出すことが大切なのです。
2新たな気持ちでスタートを切った今こそ、このギャップ思考を試していただきたいと思います。少しでも「続かない」「面倒くさい」と感じるタイミングがあるならば、自分の目標が曖昧になっていないか、ゴールとの距離をしっかり測っているか、そしてそのギャップをイメージしたうえで行動を起こせるシステムになっているかを確認してみてください。
もし「半信半疑だけど、ちょっとやってみよう」と思っていただけたなら、それで十分です。騙されたと思って、まずは目標を紙に書き出し、数字や期限で具体的に設定してみる。そして、脳をだますイメージングとアファメーションを少し続けてみる。そのうえで、「本当にまだ足りない」と感じたら、目標の見直しや修正を行いながら前進していけばいいのです。
ぜひ、「やる気に頼らない」からこそ続く目標達成法を、あなたの新年の計画に取り入れてみてください。気がつけば、去年よりもさらに一歩、いや二歩も三歩も先に進んだ自分に気づくはずです。新しいステージへ向かう2025年が、皆さんにとって実り多き年になることを心から願っています。
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