サッカーのトレーニングメニューの一つとして、近年特に注目を集めているのが「ロンド(Rondo)」です。ロンドは、名将ジョゼップ・グアルディオラ監督がその練習メニューに取り入れたことで世界的にも有名になりました。スペインや南米のサッカースタイルを象徴するようなトレーニングとして、長く活用されてきた歴史を持ちます。
本記事では、「ロンド」の基礎的な概要から、そこに詰まっている技術的・戦術的要素、さらにはトレーニングとしての利点や具体的な応用までを解説していきます。
「ロンド」とは何か?
ロンドの基本ルールと概要
ロンド(Rondo)とは、狭いスペースの中で複数の選手がボールを回し合い、それを数名の守備側(ボールを奪おうとする側)が奪いにくるという形式のパス&コントロール練習です。典型的には、円状に配置(一般的には四角のグリッド内)された攻撃側の選手たちが、中央に配置された1~2名(もしくは数名)の守備側の選手からボールを奪われないようにパスをつないでいきます。
- 攻撃側(ボール保持側):パス&コントロールを中心に、守備側にボールを奪われないように回す。
- 守備側:パスコースを予測しプレッシャーをかけコースを限定、ボールをインターセプトもしくは奪取を目指す。
パス回しだけを見ると「シンプル」にも思えますが、このシンプルなトレーニングの中にサッカーのあらゆるエッセンスが凝縮されているのがロンドの大きな特徴です。
ロンドが注目を集めた理由
ロンドはバルセロナやマンチェスター・シティを率いたグアルディオラ監督がトレーニングとして積極的に活用し、“ポゼッションスタイル”の礎を築いたことは世界的に有名で誰しもしているでしょう。短いパスをテンポよく回しながら、相手守備を崩壊させ、最終的にゴールへ迫るというスタイルは世界を魅了しました。これらを身に付けるうえで、ロンドは最適な練習方法だとされています。
ロンドに詰まった技術的要素
ロンドには多くの技術・戦術的な要素が含まれています。いくつかの例をあげると以下のとおりです。
- パスの精度とスピード
狭いスペースでボールを奪われずにつなぐためには、正確で素早いパスが求められます。 - ファーストタッチの質
ボールを受ける際に次のプレーを想定しているかどうかが重要です。タッチしてからでは遅い。 - 視野の確保・観る力
味方と相手の位置・距離を素早く把握する必要があります。 - 守備側の読み・予測
守備側にとっても、相手のパ意図を読み素早く奪いにいく判断力が欠かせません。
シンプルに見えるロンドですが、実は「パスの技術」「ボールコントロール」「視野の確保」「守備の読み」「立ち位置」「サポート」など、あらゆるサッカーの基本要素が詰まっているのです。
一瞬で観て素早い判断を
ロンドの重要なポイントとして、「観る力」と「素早い判断力」を鍛えられるという点が挙げられます。実際の試合では、常にボールが動き続け、相手・味方の位置関係は一瞬で変化します。そのため、選手は「今、どのスペースが空いているのか?」「誰にパスを出せば最も効果的か?」「サポートの位置は?」といった判断を短時間で行わなければなりません。
「観る」という行為の重要性
サッカーにおいては、「観る」ことが勝敗に大きく関わるとよく言われます。ロンドでは狭いエリアに多くの選手が存在するため、周囲の動きを見落としボールウォッチャーになるとすぐにボールを奪われるリスクが高まります。攻撃側はもちろんのこと、守備側も状況を一瞬で把握し、パスコースを潰し限定し積極的に寄せていく動きをとらなければなりません。
- 攻撃側:ボールを受ける前から周囲を把握し、相手と見方がどのように動いているのかを見る。
- 守備側:パスコースを見定めて仕掛ける時に果敢に。
こうした観る作業を反復し、高いスピードで行うことで、自然と試合中の視野の取り方や判断力が向上していきます。
正確なパスと素早い判断の関連性
ロンドでは、パスを出す側も受ける側もわずかなミスでボールを奪われてしまいます。パスを出す選手は守備の状況を瞬時に判断して、パスコースが潰される前に正確で速いボールを出す必要があります。一方、受ける側も「どこでボールを受ければ守備に奪われないか」を判断しつつポジションを取り、正確にコントロールしなければなりません。
このように、「観る」→「判断」→「プレー」という一連の流れを高い強度で繰り返すため、ロンドは非常に効率的なトレーニングメニューと言えます。
サポートの質を高める重要性
味方の状況を観る
試合中、単にパスを回すだけではなく、味方が置かれている状況・配置をを踏まえてサポートすることが大切です。
- 適切なサポートの位置取り:守備側から距離を取るだけでなく、パスコースを作りやすい角度やスペースを探る。
- タイミングの合わせ方:受け手が動き出すタイミング、出し手がボールをコントロールするタイミング。
これらを繰り返すことで、「質高いサポート」と「タイミングを合わせたプレー」の質が格段に向上します。
これは実際の試合でも全く同じことが言えます。相手のプレッシャーが強ければ、素早い展開で状況を打開する。狭いスペースにハメめられそうになれば、ワンタッチで素早く左右に振って守備を揺さぶる。こうした判断力と連携は、ロンドで培われる「観る力」と「サポートの質」を高めることで培われます。
強度の高いトレーニング
5戦術面・フィジカル面を同時に鍛える
ロンドは、限られたグリッド(エリア)の中で行われるため、ボールが休む暇なく動き続けることが多いです。必然的に守備側はプレスをかけ続け、攻撃側もプレッシャーの中で素早くパスを回さなければならないため、インテンシティー(強度)が高い状態が保たれます。
さらに、オーガナイズによっては守備から攻撃、攻撃から守備への切り替え(トランジション)も頻繁に発生します。これは現代サッカーにおいて最も重視される要素の一つであり、走るだけのフィジカルトレーニングでは得られない体力を効率的に身につけることができます。
試合により近い状況
フィジカルトレーニングと聞くと、つい「ランニング」や「筋トレ」などを連想しがちですが、サッカーの場合は試合で求められる動きが非常に複雑です。前後左右への素早い動き、身体を当て合うシーン、瞬間的なダッシュと減速の繰り返しなど、さまざまな要素が絡み合っています。
ロンドは、ボールを使いながら戦術的要素も含めて行うトレーニングなので、試合により近い状況を体感しながらフィジカル面も鍛えられる点が魅力です。特に、高いレベルのチームになればなるほど、フィジカルと戦術理解を同時に高める必要性が出てきます。そんなとき、ロンドは非常に優れたアプローチと言えるでしょう。オーガナイズ次第ではバリエーションは無数です。
ロンドの注意点
エリア設定と人数バランス
ロンドで大切なのは、トレーニングを行うエリアや攻守の人数バランスを適切に設定することです。あまりにも広すぎるとインテンシティーが下がってしまう一方、狭すぎると攻撃側がパスを回すのが不可能に近くなり、ただの“ボール回し”になってしまいます。チームや選手のレベルに応じて、適度な難易度を保てる範囲を模索しましょう。
守備の強度が肝
ロンドではどうしても攻撃側のパス回しが主体となります。しかし、守備側が本気でボールを奪いにいかないとインテンシティーが出ないため、十分な練習効果を得られません。
単調な練習にならない工夫を
ロンドは優れた練習方法ですが、同じメンバーで同じやり方を繰り返しているとパターン化して飽きがきてしまう恐れもあります。そこで、条件を加えて難易度を高めるような応用を取り入れる(参加人数を変えてみる、別のコートサイズにしてみるなど)適度に変化を加えることが大切です。
まとめ
ロンドは、シンプルながらサッカーのエッセンスが凝縮されたトレーニングです。名将グアルディオラ監督が積極的に取り入れたことからも分かるように、狭いスペースでのパス&コントロール、周囲の状況把握、守備の読み、サポート、そして高いインテンシティーを同時に鍛えることができます。
このトレーニングは幅広い層にとって効果的なトレーニング方法です。ただし、エリアの大きさや参加人数、タッチ数などを適切に調整しないと、練習が単調になったり、逆に攻守のレベルに大きな差(全くボールが奪えない等)が出すぎてしまうこともあります。重要なのは、適切な難易度とルール設定を行うことです。
今回紹介したポイントを振り返って、ぜひ日々のトレーニングにロンドを取り入れてみてください。観る力・判断力、そして高いインテンシティーを必要とするロンドをこなすことで、チーム全体のプレーの質をワンランク上に引き上げられるはずです。
サッカー要素を多く含んだをロンドは非常に良いトレーニングとなります。ぜひこの機会に、「ロンドの目的」を理解し取り組んでみてください。
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