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【サッカー講義】サッカーに重要な6つの原理原則「後編」

「うちの選手たちは、戦術を実行できていない気がする」 「結局システムって、何のために決めているんだっけ?」 「ポジションって、ただの立ち位置の話じゃないの?」 サッカーの指導現場で、こんな疑問が頭をよぎったことはありませんか。前編では「6つの原理原則」のうち、目的・エリア・時のサイクルの3つを解説しました。後編となる本記事では、残り3つの原則——戦術・システム・ポジションを取り上げていきます。 特にシステムについては、見落とされがちな重要ポイントがあります。それは——システムは選手目線では「基準」、指導者目線では「移動手段」という、二重の視点を持って捉える必要があるということ。本記事ではこの違いも丁寧に整理していきます。読み終えた頃には、6つの原則がすべて自分の中で繋がって、選手に堂々と説明できる状態になっているはずです。

前編の振り返りと、後編で扱う3つの原則

後編に入る前に、前編で扱った3つの原則をおさらいしましょう。
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原則 旅の比喩 核心
①目的 目的地そのもの 攻撃は得点、守備は失点回避+優先順位
②エリア 現在地の座標 3エリアで判断基準を切り替える
③時のサイクル 旅のタイムライン 4局面の循環、「0秒」の切り替え
後編で扱う3つは、④戦術、⑤システム、⑥ポジション。前編が「どこを目指すか/今どこにいるか/いつ何をするか」の話だったとすれば、後編は「どんな手段で・どんなルートで・誰がどんな役割で」目的地に向かうかの話になります。それでは順番に見ていきましょう。

原則④ 戦術——目的地までのルート選び

4つ目の原則は「戦術」です。これは旅でいえば「目的地までのルート選び」。最短ルートか、安全な道か、景色を楽しめるルートか——どれを選ぶかで旅の体験は大きく変わります。 ここで指導者が理解すべき根本的な定義は、戦術とは本来「こう動け」という指示ではなく、「どう状況を見るか」という思考の整理方法だということです。戦術は、ピッチ上の複雑な現象に対して、どんな状況を「優位」とみなすのか、どんな原則に基づいてプレーを組み立てるのか、どのスペースを優先的に使うのか——こうした基準を選手に与えてくれます。
戦術は選手がカオスな状況を整理し、理解しやすくするための「認知の補助」です。動きを丸暗記させる「型」ではなく、状況を読み解くための「原則」として伝える——これが戦術の正しい使い方です。
戦術を「型」として教え込むと、選手は状況を見ずに動くようになり、思考停止してしまいます。一方、戦術を「考えるための基準」として共有すると、選手は原則を使って目の前の状況を読み解こうとするようになる。この差は本当に大きいんです。

戦術の使い分け(最短・安全・景色を楽しむ)

戦術の比喩を「ルート選び」と置くと、いくつかのパターンが見えてきます。

戦術=ルート選びの3パターン

最短ルート:縦に速い攻撃、ダイレクトプレー、カウンター中心。リスクは高いが、成功すれば一気にゴールへ

安全な道:ボール保持を重視、後方から丁寧に組み立てる。失う確率は低いが、相手も守備を固めやすい

景色を楽しむ道:選手の創造性を引き出すスタイル、即興的なプレー。再現性は低いが、想定外の突破口が開く可能性

どのルートが「正解」というものはありません。選手の特徴、相手の力関係、試合の状況——あらゆる要素を踏まえて、指導者が選択するものです。そして大切なのは、選んだルートをチーム全員で共有すること。同じ目的地でも、片方の選手は最短ルートで進もうとし、もう片方の選手は安全な道を選んでいたら、チームは分裂してしまいます。 戦術が機能すると、選手の判断の成長を支えます。見るポイントが定まって認知負荷が減り、判断のスピードが上がる。判断の基準が統一されることで、試行錯誤の質も上がる。そしてチーム全体の意図が揃うことで、ユニット単位での高度な判断が可能になる——戦術は使い方次第で「最強の学習ツール」になるんです。

原則⑤ システム【指導者目線】——移動手段

5つ目の原則は「システム」です。ここが今日の最重要ポイントです。なぜなら、システムには「指導者目線」と「選手目線」で異なる意味があるからです。まずは指導者目線から見ていきましょう。 指導者にとってシステムは、旅でいえば「移動手段」にあたります。徒歩、自転車、車、電車——どんな手段で目的地に向かうか、その選択がシステムです。 例えば、4-4-2、4-3-3、3-5-2、3-2-5——これらはすべて「どんな形で挑むか」という移動手段の違いです。徒歩で行くのか自転車で行くのか、それぞれ得意な地形と苦手な地形があるように、各システムにも得意な状況と弱点があります。指導者は、自チームの特徴や相手の特徴を踏まえて、最適な移動手段を選ぶ責任があるんです。
システム 移動手段の比喩 特徴
4-4-2 バランスの取れた車 どんな地形にも対応、迷ったらこれ
3-2-5(攻撃時) 高速のスポーツカー 攻撃力は高いが、後方は脆い
5バック 頑丈なトラック 守備は強いが、攻撃の速度は出ない
指導者がシステムを「移動手段」として捉えると、「どんな状況でどの手段を選ぶか」という戦略的な視点が持てるようになります。そして可変システムは、まさに「途中で乗り換える」ようなもの。守備時は頑丈なトラックで、攻撃時は高速スポーツカーに——これが現代サッカーで多くのトップクラブが採用している考え方です。

原則⑤ システム【選手目線】——基準

そして同じシステムを、選手目線で捉え直すとどうなるか。選手にとってシステムは「基準」になります。これは見落とされがちですが、極めて重要な視点です。 選手にとってシステムは、自分が立つべきスタートポジション、つまり「帰るべき場所」です。試合中、選手はポジションを離れて攻撃参加したり、守備のカバーに行ったりします。しかし、プレーが途切れた時、攻守が切り替わった時——選手が「まず立つべき場所」が定まっていなければ、チームの秩序は保てません。
指導者にとってシステムは「どんな手段で挑むか」という選択。 選手にとってシステムは「立ち戻るべき基準」という安全地帯。 同じものを別の角度から見ているからこそ、両方の理解が必要なのです。
指導者がこの二重の視点を持っていないと、選手に対する説明が混乱します。「我々のシステムは4-3-3だ」と伝える時、選手にとってそれは「どこに立てばいいかの基準」として機能してほしい。一方、自分自身では「なぜ4-3-3を選んだのか」という移動手段としての戦略的な意味を理解しておく必要がある——この二重構造が、システムを語る上での核心です。

原則⑥ ポジション——旅の役割分担

最後の原則は「ポジション」です。これは旅でいえば「役割分担」。運転手、ナビ役、荷物持ち——役割が曖昧なら、どんなに優秀なメンバーが集まってもチームは混乱します。 ポジションを単なる「立ち位置」と捉えるのは、最も避けたい誤解です。ポジションとは、各選手に求められる役割とタスクの集合体なんです。サイドバックは「バック(守備)」が第一任務であり、その上で「サイド(側面)」での攻撃参加が求められる。アンカーは「中盤の底のフィルター役」と「ビルドアップの起点」の両方を担う。それぞれのポジションには、明確な役割が言語化されています。 役割とタスクが明確に設定されていると、チームには6つのメリットが生まれます。①判断のズレがなくなる、②再現性が高まる、③プレー速度が上がる、④選手の強みが最大化される、⑤攻守の連動が生まれる、⑥トレーニング構成が一貫する——これらはすべて、役割の明確化によってもたらされる効果です。

役割を選手の特徴に合わせる例

推進力のあるSB:大胆に前進し、攻撃参加するタスクを与える

足元の技術が高いアンカー:ビルドアップの出口、前進の起点

裏抜けが得意なFW:相手CBを押し下げ、深さを作るタスク

ボール奪取が強いCH:ネガトラ局面のキーマン

役割を設定することは、選手を型にはめることではありません。むしろ、その選手の強みを最大限に引き出すためのチーム作りです。「この選手にはこの役割を任せる」という明確な意図を持つことが、選手育成にもつながっていきます。

6つを統合する——指導者の真価

ここまで6つの原則を順番に見てきました。しかし、最も大切なのは——これら6つは独立した知識ではなく、互いに連動しているということです。 例えば、「ミドルサードでネガトラが起きた時、4-3-3のシステムを採用しているチームのボランチ(ポジション)はどう判断すべきか」という問いを考えてみましょう。これに答えるには、①目的(守備の優先順位)、②エリア(ミドルサードの特徴)、③時のサイクル(ネガトラ)、④戦術(チームの戦術コンセプト)、⑤システム(4-3-3の構造的な強み・弱み)、⑥ポジション(ボランチに与えられた役割)——6つすべてが絡んできます。 指導者がこの連動性まで含めて言語化できるかどうか——これが指導の質を決定づけます。「6つの原則を一つひとつ知っている」だけでは不十分で、それらを「統合して状況に応じた判断材料として使える」ことが、指導者の真価なんです。

選手に聞かれて、答えられますか?

本記事のタイトルでもある問いを、最後にもう一度投げかけます。「選手に聞かれて、答えられますか?」 「サッカーの目的って、何ですか?」「3つのエリアで何が違うんですか?」「攻守の切り替えで、まず何をすべきですか?」「うちのチームの戦術って、何のためにあるんですか?」「なぜ4-3-3なんですか?」「自分のポジションの役割は何ですか?」 選手から急にこれらの質問をされた時、自分の言葉で堂々と答えられるかどうか——それが、指導者として最低限求められる準備です。なんとなく分かっているつもり、なんとなく感覚で指導しているつもり——では、選手は本気でついてきません。
原理原則が整理されていない指導者のもとで、選手は迷い続けます。指導者の頭の中が整理されているから、選手は安心して判断できる。これが原理原則を学び続ける、最大の理由です。

後編のまとめ:6つの原則は連動して機能する

後編では④戦術、⑤システム、⑥ポジションの3つを取り上げました。最後にもう一度整理しておきます。

📌 後編のまとめ

  • ④戦術:目的地までのルート選び。動きを覚えさせる「型」ではなく、状況を読み解くための「原則」として伝える
  • ⑤システム【指導者目線】:移動手段。どんな形態で挑むかという戦略的な選択
  • ⑤システム【選手目線】:基準。立ち戻るべき帰る場所。同じシステムを別の角度から見る視点
  • ⑥ポジション:役割分担。明確化することで、チームに6つの恩恵が生まれる
  • 6つを統合する力こそが、指導者の真価——一つひとつ知っているだけでは不十分
サッカーの6つの原理原則——①目的、②エリア、③時のサイクル、④戦術、⑤システム、⑥ポジション。前編・後編を通じて整理してきましたが、これらは「指導の地図」として指導者の頭の中に常に存在すべきものです。 地図がなければ目的地にはたどり着けません。逆に地図があれば、迷っても何度でも立ち返れます。本記事を読んだ皆さんが、明日からの指導現場で、この6つの原則を一つひとつ言語化しながら選手と向き合っていただければ嬉しく思います。サッカーの本質を、選手と一緒に深く理解していきましょう。

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