サッカー指導者としてA級ライセンスを取得する過程は、想像以上に困難なものでした。これまで高校生以下の年代が指導の中心であったことが、そのように感じた大きな原因の1つであると考えています。
最も苦労した点は、11対11のゲーム全体をコントロールすることでした。これはシンプル経験不足。これまでは、比較するとフルピッチで11対11のゲーム形式TRを実施できる環境になかったため、それ以外の状況で指導することが多かったです。よって、フルピッチでの戦術的アプローチや指示の瞬間を的確に捉えることが難しかったと感じました。
また、受講者には元Jリーガーなど、一流の経験と知見を持つ選手出身のコーチも混ざっていました。そうした人たちに「なるほど」と納得してもらうには、抽象的なことでなく、より具体的な根拠や、ミス事象に対してしっかりと補填・アプローチできるようなトレーニングメニューを提示する必要がありました。ここで痛感したのは、自分のサッカー観や哲学があいまいだと、相手を説得できるコーチングは困難だということです。
さらに、テーマ理解もかなり難しいと感じました。A級では与えられたテーマに基づいてトレーニングを組み、選手を理想の姿にもっていくことが求められます。そのためには、与えられたテーマの意味意図を深く理解し、ゲーム全体で果たす役割、目指すべきプレーモデル、選手に求める具体的行動などを明確化する必要がありました。
しかしながら当初はこれらを理解することが難しく、はなかなか整理しきれませんでした。加えて社会人選手へのアプローチでは、高校生以下の指導を中心に行っていた私にとっては技術的・戦術的な理解を選手に落としこむといった指導・コーチング力が、当時は不足していたと思っています。
とはいえ、このトライアルを経て得られたものも多くあります。まずは、国内外でトップレベルにいる指導者たちとのつながりが築けました。中にはJクラブの監督の方もいらっしゃいます。
またS級ライセンス保持者や元Jクラブの監督を率いるコーチにも、自分が組み立てたトレーニングを見ていただき、直接フィードバックをもらうことができたのはとても良い経験です。
さらに、自分のサッカー観を整理する良い機会にもなりました。A級取得の過程で、自分の考えやトレーニング内容を他者に共有することができた結果、自分自身がサッカーに関してどう考え、指導の軸は何なのか?何を目指してサッカーに取り組んでいるのか等がクリアになったのと考えています。
結果的に、戦術的な知見、コミュニケーション能力、選手を観察する眼、トレーニングメニューの構築力など、指導者として必要なあらゆるスキルが底上げされました。
A級ライセンス取得は単なる資格取得の過程ではなく、自分自身を鍛え直すプロセスでもありました。これからも学び続け、積み重ねた知見と人脈を生かして、より質の高い指導を実践していきたいと思います。
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