はじめに
「戦術的ピリオダイゼーション」という言葉は過去にとても流行りましたが、今では逆に聞き馴染みのない言葉となったかもしれません。
初めてこの理論を聞く方にとっては、理論がどういった背景を持ち、何を意図しているのか正直はっきりと理解することは非常に困難かと思います。
しかし、「ピアニストはピアノを上手くなるために、わざわざピアノの周りを走ったりはしない」「サッカーはサッカーをプレーしてこそ上達する」「サッカーはカオスでありフラクタルである」といった有名なフレーズに触れたとき、なんとなく“核心を突いているな”という気持ちになるのではないでしょうか?
とはいえ、「カオス」「フラクタル」といった難解な単語が出てくると、どうしても頭が混乱してしまうのも事実。今回の記事では過去のモノを改定し、抽象的な言葉に惑わされることなく、戦術的ピリオダイゼーションが実際のトレーニング現場にどのように役立つのかを再度整理してみました。
さらに、前回の記事でも触れた「プレーモデル」や「4つの局面」の考え方を踏まえながら、どのように日頃のトレーニングを組み立てるべきかを具体的に掘り下げていきます。
「戦術的」と「ピリオダイゼーション」――2つのキーワードを分解する
1. 「戦術的」とは何か?
サッカーにおける「戦術」は、一言で言えば「チームの戦い方」または「約束事」です。より深く掘り下げれば、プレーモデルが戦術の根源にあると考えることもできます。プレーモデルとは、「自チームがどのようにサッカーを進めていくか」を明文化した“説明書”のようなものです。たとえば、ポゼッションを重視するチームもあれば、ショートカウンターを狙うチームもあるでしょう。いずれにしても、プレーモデルをチーム全員が理解し、それをピッチ上で体現していくプロセスこそ“戦術的”なアプローチと言えます。
2. 「ピリオダイゼーション」とは何か?
「ピリオダイゼーション」とは、「期分け」と訳されることもあり、トレーニングを一定の周期やステージに分けて考えことを意味します。たとえば、オフシーズンからプレシーズン、シーズン中、シーズン後半、といったように時間軸に沿って目的や負荷を変えながらトレーニングを組む手法は、ピリオダイゼーションの一つの典型例でもあります。コンディショニングやフィジカル強化においては昔からよく使われる考え方ですが、サッカーの“戦術”と掛け合わせた場合はどうなるのか?が一番きになるところではないでしょうか?
ここで登場するのが「戦術的ピリオダイゼーション」です。単に体力面だけでなく、プレーモデルを軸にしてサッカーに必要な要素をどうトレーニングに還元し、どのような周期でチームを仕上げていくかがこの理論のポイント。日常のトレーニングや試合に向けた準備に、この戦術的ピリオダイゼーションの視点を導入することによって、より強固で戦術を理解した個人の集合体=チーム作りが可能になります。
戦術的ピリオダイゼーションを活用したトレーニングの落とし込み
では、実際に「戦術的ピリオダイゼーション」をどのように落とし込めばよいのか。前回の記事同様に具体的なポイントを整理します。
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