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【サッカー講義】選手の成長を止めていたのは、実は”指導者自身の癖”だった

はじめに:選手の成長ばかり見ていませんか

サッカー指導者は、日々選手の成長を願いながら、練習を組み立て、声をかけ、試合に向けて準備をします。「どうすれば選手がもっと伸びるだろう」「どうすればチームがもっと良くなるだろう」。そんな思いを持っている指導者ほど、選手の変化には敏感です。しかしその一方で、自分自身の指導の"癖"には驚くほど気づきにくいものです。

選手の成長を願う気持ちが強いほど、指導者は「選手の課題」に目が向きます。けれど、実はチームの成長を一番止めているのは、選手ではなく、指導者自身の行動パターンであることが少なくありません。これは、我々自身が現場で強く感じてきたことでもあります。この記事ではその"癖"に優しく光を当てながら、指導者が自分の指導をより豊かにするためのヒントをお伝えします。





指導者の癖は、無意識の「設計図」になっている

指導者の行動には、必ず"癖"があります。それは悪いものではなく、むしろ自然なことです。人は誰しも、自分が慣れ親しんだやり方や価値観をベースに行動します。ただし、問題はその癖が無意識のまま固定化されてしまうことです。

  • 説明が少し長くなる癖
  • 選手の発言を遮ってしまう癖
  • 立ち位置が偏る癖
  • 介入が早くなる癖
  • 正解を先に言ってしまう癖

これらは、指導者が悪いわけではありません。説明が長いのは伝えたいことが多いから。介入が早いのは失敗させたくないから。多くの癖は、過去の成功体験から生まれています。だからこそ疑いにくい。ただ、癖が無意識のまま積み重なると、選手の成長の"天井"を知らず知らずのうちに作ってしまうことがあります。選手は、指導者が作る環境の中で成長します。つまり、指導者の癖はそのまま選手の成長環境の設計図になってしまうのです。


我々は繰り返し「指導者の仕事は、答えを与えることではなく、選手が答えを見つけられる構造を用意すること」とお伝えしてきました(中央突破の本質ほか)。「正解を先に言ってしまう癖」は、この構造づくりを毎回、無意識に上書きしてしまいます。説明が長ければプレー時間を、遮れば言語化の機会を、早い介入は失敗から学ぶ機会を ── それぞれの癖が、選手から何かを静かに奪っています。





自分の指導を撮影すると、世界が変わる

我々自身、指導の質を高めたいと思ったときに最も効果があったのが、「自分のコーチングを撮影すること」でした。撮影した映像を見返すと、驚くほど多くの気づきが得られます。

  • 思った以上に説明が長かった
  • 選手が考える前に答えを言っていた
  • 立ち位置が偏っていて、見えていない選手がいた
  • 声のトーンが強すぎて、選手が萎縮していた
  • 選手の成功より、自分の正解を優先していた

こうした気づきは、普段の指導中にはほとんど見えません。なぜなら、指導者は「選手を見ている」からです。自分自身の姿は、どうしても見えにくい。だからこそ、撮影はとても大きな価値があります。映像は、言い訳できない"事実"を静かに教えてくれます。そしてその事実は、指導者を責めるものではなく、むしろ成長のための宝物になります。コツは、最初から全部を見ようとしないこと。まずは練習の最初の5分だけ、テーマも「説明の長さ」一つだけ。ハードルを下げて、続けることを優先してください。





他のコーチに意見をもらうという選択肢

もう一つ、大切にしていることがあります。それは、他のコーチに客観的な意見をもらうことです。自分の癖は、自分では本当に見えません。どれだけ経験を積んでも、どれだけ学んでも、盲点は必ずあります。だからこそ、信頼できる仲間に「どう見えた?」と聞くことは、とても大きな価値があります。

ポイントは聞き方です。「良かったか、悪かったか」ではなく「どう見えたか」を聞く。評価ではなく、観察を集める。そして、もらった意見に反論せず、まず受け取る。これができる指導者のところには、正直なフィードバックが集まり続けます。近くに聞ける仲間がいない場合は、撮影した映像を指導者仲間と交換し、互いにコメントし合う方法もあります。他者の視点は、自分の指導を照らすライトのようなものです。指導者同士が互いにフィードバックし合う文化が生まれれば、チームだけでなく、地域全体の指導の質が底上げされていきます。





オープンマインドこそ、指導者の最大の武器

自分の癖に気づくことは、決して恥ではありません。むしろ、指導者としての成長の入り口です。大切なのは、オープンマインドでいること。「自分はまだまだ伸びる余地がある」「もっと良い指導ができるはずだ」。そんな柔らかい気持ちで自分の指導を見つめ直すことができれば、選手の成長は必ず加速します。

癖を指摘されて感じる恥ずかしさの正体は、「完璧な指導者でいなければ」という思い込みです。完璧な指導者はいません。いるのは、学び続ける指導者と、止まった指導者だけです。指導者が変われば、選手が変わります。選手が変われば、チームが変わります。その最初の一歩は、自分の癖を知ることです。


「プロになる選手の条件」の回でお伝えした「上手くいかない原因の矢印を、自分に向けられる選手が伸びる」── これは指導者にもそのまま当てはまります。チームが伸びない原因を選手や環境のせいにしている間は何も変わらない。矢印を自分に向けた瞬間から、変えられるものが目の前に現れます。選手に求める姿勢を、まず自分が体現することが、オープンマインドの正体です。





最後に:指導者の成長は、選手への最大のプレゼント

選手は、指導者の背中を見ています。指導者が学び続ける姿勢は、選手にとって何よりの刺激になります。「自分ももっと成長したい」「もっと良い指導がしたい」。そんな気持ちを持ち続ける指導者は、必ず選手から信頼されます。そして、チームは静かに、しかし確実に変わっていきます。

指導者の癖を知ることは、選手の未来を広げること。その一歩を踏み出すあなたを、我々は心から応援しています。

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