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【サッカー講義】パスの目的 〜ボールを動かせ!と言っても上手くいかない本当の理由〜

2026 1/13
理論/TRメニュー 原理原則 指導哲学/考え方
2026年1月14日

――「ボールを動かす」では、相手は動かない

サッカーにおいて「パス」は最も基本的なプレーの一つです。練習でも試合でも、私たちは日常的にこう声をかけます。

「もっとボールを動かそう」

「パスを回そう」

「テンポよくつなごう」

しかし、その言葉通りにプレーが改善されることは、意外と少ないものです。なぜなら、そこにはパスの本当の目的が抜け落ちているからです。

私は、パスの目的は**「相手を動かすこと」**だと考えています。





目次

「ボールを動かすこと」が目的になった瞬間に起きること

「ボールを動かせ」という指示が現場で機能しない理由は、とてもシンプルです。その言葉は、行動を具体化しないからです。

選手の頭の中では、以下のような問いが曖昧なまま、「とにかくパスをする」状態に入ります。

  • どこに?
  • なぜ?
  • 誰のために?

結果として、以下のような「形だけのパス」が起きてしまいます。

  • 相手が全く動いていない横パス
  • 前を向けない安全なバックパス
  • 受け手が困るだけの形式的なつなぎ

一見、ボールは動いている。けれど、相手は何も動いていない。

つまり、「ボールを動かすこと」が目的になった瞬間、パスは単なる**「作業」**になってしまうのです。






パスは「相手に何かを起こすため」の手段

本来、パスはそれ自体が目的ではありません。常に、相手に何かを起こすための手段です。

具体的には、以下のような変化を相手に強いるためにパスを出します。


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  • 相手のラインを下げる
  • 相手の重心をずらす(=相手に矢印を出させる)
  • 相手の守備者を引き出す
  • 相手の視野を分断する

これらすべてが「相手を動かす」行為です。

相手が動くからこそ、スペースが生まれ、時間が生まれ、次の選択肢が生まれます。パスは、相手を動かすための技術なのです。






「相手を動かす」という目的が、判断を変える

「このパスで、相手をどう動かしたいか?」

この視点を持つと、選手の判断は自然に変わります。

  • 今はパスを出さない方がいい
  • この位置に付けると相手が食いつく
  • 一つ戻すことで、相手が前に出てくる

同じ“横パス”や“バックパス”でも、目的が違えば意味は全く変わります。

パスの価値は、ボールの移動距離ではなく、**「相手の変化量」**で決まるのです。






「目的」を伝えると、行動は具体化される

指導現場で、声かけを以下のように変えるだけで、選手の動きは劇的に変わります。

言い換えの例

  • ×「ボールをもっと動かそう」○「相手の中央を広げたい。そのために一度外を使おう」
  • ×「テンポを上げよう」○「相手がスライドしきる前に、逆を突こう」

後者には、明確な目的があります。目的があるからこそ、選手は**「どこを見るか」「いつ出すか」「なぜその選択をしたか」**を自分の中で整理できるのです。

目的は、選手の思考を一つに集める“軸”になります。






パスがつながらない時に見るべきポイント

パスがつながらない時、技術や判断力の問題に目が向きがちです。もちろんそれも一因ですが、本質は別のところにあります。

「このパスで、相手をどう動かそうとしていたか?」

ここが曖昧なままだと、パスはつながってもプレーは前進しません。逆に言えば、多少の技術的ミスがあっても、相手を動かす意図が共有されていれば、プレーはつながり始めます。





パスは“ボールの会話”である

パスは味方同士の会話であり、同時に相手へのメッセージでもあります。

  • 「こっちに来い」
  • 「そこを空けろ」
  • 「今は我慢だ」

そのメッセージの先にあるのが、「相手を動かす」という目的です。

ボールを動かすことに意味があるのではありません。相手が動いたかどうかに意味があります。






まとめ:指導者が最初に整理すべき問い

最後に、指導者の方に一つ問いを投げかけたいと思います。

「今、選手に出させているパスは、相手に何を起こすためのものか?」

この問いが整理されると、トレーニングの設定も、声かけも、評価の基準も、すべてが変わってきます。

パスの目的を伝えることは、サッカーの“やり方”を教えることではありません。サッカーの“考え方”を共有することです。

ボールではなく、相手を見る。

動かすのは、ボールではなく、相手。

そこから、サッカーは一気に変化していきます。私も日々試行錯誤、トライ&エラーしながら「その選手にとって何が一番良いのか?」を考えています。読者の皆様とまたこのようなテーマでお話しする機会を作成できるようにしたいですね。


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