結果は3-3の引き分け。鹿島は44分にレオ・セアラ選手が先制し、追いつかれ、逆転され、67分に再びレオ・セアラ選手が同点。83分に松村優太選手が再逆転しましたが、後半アディショナルタイム7分に追いつかれました。鹿島は4試合勝ちなしです。
今回の目的は、はっきりしています。3得点できた攻撃の良さを認めながら、なぜリードを守り切れなかったのかを考える。攻撃で2つ、守備で3つの場面を扱い、最後に鹿島が整えたい守備をまとめます。
レオ・セアラ選手の質的優位
44分の先制点。GKの早川友基選手が長いボールを蹴り、レオ・セアラ選手が頭でつないで右の松村選手へ。松村選手のクロスに、もう一度ゴール前へ入り直したレオ・セアラ選手がヘディングで合わせました。一つの得点の中に、レオ・セアラ選手が二回出てきます。最初の競り合いで味方につなぎ、走り直してクロスに合わせる。空中戦の強さと、ゴール前へ入り直す動きが、一本の攻撃の中でつながっていました。
「質的優位」の考え方
相手より強い選手がいることは大きな武器ですが、その選手に任せるだけでは優位は生まれません。早川選手が競れる場所へ蹴り、松村選手が走り直す時間に合わせてクロスを上げた。周囲の配球と支援があるから、得意なプレーをできる状況でプレーできる。強い選手を生かすとは、その選手が一番強い場面を周囲が作ることです。
鈴木優磨選手にも触れておきます。この日は左のミッドフィルダーで得点はありませんでしたが、鈴木選手の価値は点の数だけでは測れません。どこでボールを受けるか、受けた後に周りをどう生かすか、相手を引きつけて味方の時間を作る。そういう動きで評価したい選手です。
ポケットへの侵入と中央の選手の関係
67分の同点ゴール。左サイドでチャヴリッチ選手がスルーパスに抜け出し、ペナルティーエリアの深い位置 ── 我々が「ポケット」と呼ぶ場所 ── からゴール前へ折り返し、レオ・セアラ選手が合わせました(今季10点目)。折り返した役はチャヴリッチ選手、決めた役はレオ・セアラ選手。大事なのは二人の関係です。
ポケットへ誰かが入ると、守備者はその選手に対応しなければならず、後ろにいる受け手を見づらくなります。前のボールと後ろの走者を同時には管理できない。だから中央の選手は、折り返しを受けられる位置を静かに取っておく。全員が同じ深さへ走り込んではいけない。深く入る人と、少し手前で待つ人。この段差がゴールを生みます。
「ポケットとは一体何なのか」
ポケットに入った選手を「おとり」と言ってしまうと少し違います。チャヴリッチ選手自身もそのままシュートを打てる位置にいた。だから守備者は本気で対応しなければならず、本気で対応するから後ろが空く。おとりではなく、本物の脅威が二つある。それがこの得点の本当の形です。
1失点目 ── 背後を守るための連係
前半アディショナルタイム3分。脇坂泰斗選手がピッチ中央から浮き球のスルーパスを出し、マルシーニョ選手が背後へ抜け出してGKとの駆け引きを制しました。先制した直後の痛い失点です。
こういう失点は、背後を取られたディフェンダーだけに原因を求めがちです。確認したいのは二つ。一つ、パスを出した脇坂選手にどれだけ圧力がかかっていたか。前を向いて顔を上げて狙って蹴れる状態だったのか。二つ、最終ラインはそれに応じた準備ができていたか。出し手に圧力がかかっていないならラインを少し下げて背後を守り、圧力がかかっているなら上げてコンパクトにする。この判断が、出し手の状況と合っていたかです。
ネガティブトランジションの「時」の共有
書籍で使っている「時」の共有。今は前で奪いに行く時なのか、後ろで守る時なのか。前に出る選手と背後を守る選手の判断がそろっているか。前の選手は奪いに行ったのに後ろの選手は下がりたかった ── そのズレの瞬間に、浮き球が一本通ります。この失点は個人の背後対応というより、前と後ろの「時」のズレとして見たいところです。
2失点目 ── 逆サイドとこぼれ球への対応
54分。左サイドから三浦颯太選手がクロス。鹿島は一度対応しますが、ボールが右側へ流れ、伊藤達哉選手がこぼれ球を収めてアウトサイドで巻いたシュート。逆転されました。
この失点は二段階で見ます。一段階目、左からのクロス。ボール側へ寄るのは当然ですが、寄りながら逆サイドにいる相手も確認できていたか。大外の選手を誰が見るのか。二段階目、はね返した後。クロスをはね返した瞬間に守備は終わっていません。ボールが逆側へ渡った後、誰が寄せるのか。
「コンパクトに守る」を、全員がボールへ集まることと混同してはいけません。コンパクトとは、中央を守りながら、逆サイドにも対応できる距離を保つこと。ボール側に寄せる人、中央をカバーする人、逆サイドを気にする人。この分担があって初めてコンパクトです。全員が左のクロスに寄れば、右に流れたボールには誰も間に合いません。こぼれ球への寄せと中央のカバーを、別の選手が担う必要があります。
終盤の失点 ── クロスに対する人数と役割
後半アディショナルタイム7分。右サイドから山本悠樹選手がクロス、ゴール前にペドロ・ホマーノ選手が飛び込んで同点。勝利まであと少しのところで追いつかれました。
終盤の川崎は前にどんどん人数をかけてきます。最終ラインの人数だけではゴール前へ入ってくる相手を全員は捕まえられない。だから中盤がどう補うかが問われます。大事なのは人数をそろえることではなく、戻りながら相手を捕まえること。戻る途中で「自分はこの選手を見る」と決めて受け渡す。この受け渡しが遅れると、ゴール前で一人余ります。
一方で、全員がゴール前へ下がってしまうと、折り返しやこぼれ球への対応が遅れます。最終ラインの手前にスペースができ、そこにボールが落ちればフリーで打たれる。だから整理が要ります。誰が最終ラインを補ってゴール前の相手を捕まえるのか。誰がその手前に残ってこぼれ球とセカンドボールに備えるのか。人数を増やすことと役割を分けること、両方が必要です。
クロスの出し手への圧力も見逃せません。出し手が自由ならクロスの精度は上がります。そしてアーリークロスの怖さもここにあります。守備が人数とマークを整える前にボールがゴール前へ届いてしまう。だから、クロスの対応は上がった後ではなく、上がる前から始まっています。
- クロスの出し手への圧力
- ゴール前へ入る相手の把握
- 中盤の帰陣とマークの受け渡し
- 最終ライン手前のスペースへの備え
鹿島が整えたい守備
中盤と最終ライン。距離と判断をそろえる。前で奪うのか後ろで守るのか。出し手に圧力がかかっているのかいないのか。その状況を中盤と最終ラインが同じように読めているか。1失点目も2失点目も終盤の失点も、根っこは同じです。相手が前方への人数を増やしてきた時に、人数で対抗するのではなく、役割分担で対応する。
鹿島には、レオ・セアラ選手を中心に得点できる力があります。その強みを勝利につなげるには、中盤と最終ラインの連係が必要です。誰が奪いに出て、誰が背後を守るのか。相手がゴール前へ人数を増やしたとき、誰が戻って対応するのか。ここをそろえることが、勝ち切るための改善点だと考えます。