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【サッカー講義】2026年|サッカーの目的・原理原則「後編」

前編では、サッカーの目的が「相手より1点でも多く得点を取り、失点を相手より少なくする」ことであり、つなぐこともビルドアップも手段であること。判断の基準は「逆算」であり、試合は攻撃→攻守の切り替え→守備→守攻の切り替えという4局面のサイクルで回り続けることを整理しました。後編は残りの3局面 ── ボールを失った瞬間、守備、そしてボールを奪った瞬間です。この3つにも、攻撃と同じように明確な目的と原則があります。






攻守の切り替え(ネガトラ)── 目的3つ

  1. 即時奪回 ── 失った直後は相手も攻撃の形が整っていない。ボールの近くにいるなら、すぐに奪い返しに行く
  2. 相手の前進を防ぐ ── すぐに奪えないなら、せめて前へ運ばせない。遅らせるだけでも味方が戻る時間が生まれる
  3. 守備の態勢を整える ── ボールから遠い選手は、奪いに行くのではなく自分のポジションへ戻り、次の守備の準備をする

大切なのは、この3つが「ボールと自分の距離」で切り替わることです。近い選手は奪い返す。少し離れた選手は前進を防ぐ。遠い選手は整える。全員が同じことをするのではなく、全員が自分の位置に応じた目的を持つ。これが「切り替え」の正体です。


我々の書籍でも「即時奪回」を大きな柱として整理しています。そして「ボール保持の本質」でお伝えしたとおり、切り替えの質は失う前の配置でほぼ決まります。保持の段階からロスト後の役割まで準備されているチームは、失った瞬間に迷いなく動き出せるのです。





ネガトラの原則 ── 6つ

  1. ボールへの圧力 ── 保持者に寄せて、自由な前進とパスをさせない
  2. 相手への圧力 ── ボールの近くの受け手を捕まえ、簡単な逃げ道を消す
  3. スペースを埋める ── 特に中央、ゴールへ直結する場所を先に閉じる
  4. ポジションを整える ── 全体の陣形を守備の形へ戻していく
  5. シュートを防ぐ
  6. ゴールを守る

順番に意味があります。①②はボールの近くで即時奪回と前進阻止を担う原則。③④はその間に後方を整える原則。⑤⑥は最後の砦です。つまり6つの原則は、一人が全部やるのではなく、チームで分担する。奪い返せればベスト。でも奪い返せなくても、前進を防ぎ、態勢を整え、シュートまで行かせなければ、失点はしません。





守備の目的 ── 3つ。一番肝心なのは「前進を防ぐ」

  1. ゴールを守る ── ゴールの幅は7.32m。極端に言えばペナルティーエリアに11人が立てば失点の可能性はかなり下げられる。実際にそれに近い守り方で勝ち点を持ち帰るチームもあり、賛否はあるが「目的には忠実」
  2. ボールを奪う ── 奪えなければ攻撃は始められない
  3. 相手の前進を防ぐ(最も肝心) ── 試合の大半の時間、守備側がやっているのは「前進させない」こと

守備と聞くと「奪う」か「守る」に目が行きますが、日本代表で言えば遠藤航選手や守田英正選手のような選手が、中盤で相手の前進を止め続けています。派手にボールを奪う場面だけでなく、パスコースを消し、運ぶドリブルを止め、相手の攻撃をやり直させる。前進を止め続ければ相手は勢いを失い、その中で生まれた苦しいパスが「奪いどころ」になる。3つの目的は、別々ではなく一本の線でつながっています。





守備の原則 ── 4つ

  1. 遅らせる ── まず前進を塞ぎ、攻撃のスピードを落とさせる。味方が戻る時間、陣形を整える時間を作る
  2. 厚みと集結 ── ボール周辺に人数を集め、塊となって動く。1人目に2人目・3人目が連なって初めて守備になる
  3. バランス ── 集結の一方で、逆サイドや背後が空きすぎないよう全体を整える
  4. コントロール ── ただ守るのではなく相手を「誘導」する。行かせたい方向へ追い込み、奪いどころを自分たちで決める





守攻の切り替え(ポジトラ)── 目的3つ×原則3つ

目的:①ファストブレイク(守備が整う前に素早くゴールへ)②早く攻撃の態勢を整える(攻め切れないならボールを落ち着かせ形を作る)③ボールを保持する(無理に急がず、保持して相手を押し下げる)。ここでも、状況に応じて目的を選ぶことが大切です。

原則:①前進すること(奪った瞬間、まずゴール方向を見る ── 前編の「まず裏、まずゴール」と同じ)②伸ばすこと(密集で奪ったボールを広がりのあるポジションへ運び、ピッチを広く使う)③相手の視野から消えること(奪った直後、相手はボールに気を取られている ── その瞬間に視野の外へ動き出せばフリーで受けられる)。

奪った瞬間は、最大のチャンスであると同時に、奪い返される最大のリスクの瞬間です。前編でお伝えした「切り替えの速さ=準備の速さ」 ── 奪う前から「奪えたらどこへ」を考えられている選手だけが、この一瞬を使えます。





番外編:原理原則を「超える」選手たち

最後に、あえて逆の話をします。世界には、原理原則を超えてしまう選手がいます。ムバッペ選手のスピードは、「遅らせる」という守備の原則を一人で無効化することがあります。メッシ選手、ロナウド選手、ネイマール選手。彼らのプレーは、時に原則の外側から試合を決めてしまう。では、原則を学ぶ意味はないのでしょうか。我々は、逆だと考えています。

まず、原則を超える個はごく一握りで、チーム作りの前提には置けません。そして大切なのは、原則を理解した中で個を発揮する選手の存在です。「人が、戦術になる」の回でお伝えしたとおり、原則は土台であり、人の武器はその上に乗る。チームに共通の原則があるから、一人の異質な武器が計算できる形で生きる。原則は、個を消すための檻ではありません。個を最大限に生かすための、共通の土台です。だから我々は、原則を教え、そのうえで、原則からはみ出す瞬間の輝きも認めたいのです。





まとめ ── 4局面すべてに、目的と原則がある

  • 攻撃:原則4(突破/幅と深さ/モビリティー/ひらめき)※前編
  • 攻守の切り替え:目的3(即時奪回・前進阻止・整える)× 原則6
  • 守備:目的3(守る・奪う・最も肝心=前進を防ぐ)× 原則4(遅らせる・厚みと集結・バランス・コントロール)
  • 守攻の切り替え:目的3(速攻・整える・保持)× 原則3(前進・伸ばす・視野から消える)

こうして並べると、サッカーの90分は、目的と原則の連続でできていることが分かります。「切り替えろ」ではなく「近いなら奪い返せ、遠いなら整えろ」。「守備しろ」ではなく「まず前進を防げ」。言葉が具体的になるほど、選手の判断は速く、軽くなります。

これから試合を見る時は、4つの局面ごとに「このチームは今、何を目的にしているか」という目で見てみてください。試合が、まったく違って見えるはずです。

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