鹿島は前半22分にレオ・セアラ選手のヘディングで先制しながら、後半9分に追いつかれます。それでも後半アディショナルタイムの90+8分、コーナーキックのこぼれ球を小川諒也選手が左足でゴール前へ送り、関川郁万選手が右足でコースを変えて決勝点。2-1で、前節に続く2試合連続のアディショナルタイム決勝点となりました。
鹿島のビルドアップ ── 前を向くか、キープするか
開始直後から鹿島は前進する形を作り、2分にはヤン・マテウス選手が最初のシュートを放ちました。映像で見る限り、立ち上がりのビルドアップでは、背負ったレオ・セアラ選手が無理をせずレイオフで落とし、前を向いた選手が次を決める場面が複数見られました。前節と同じ、「背負ったら落とす、前向きが次を決める」の形です。ビルドアップでは、前を向くのか、一度キープしてやり直すのか。この判断をはっきりさせることが生命線で、鹿島はそこが整理されています。
一方で、前節の総評で指摘した課題も残っていました。センターバックからサイドバックへボールが入った瞬間に、攻撃が詰まる場面です。解決策としては、サイドバックを内側へ動かす方法、思い切って高い位置へ押し出す方法、ボランチが落ちて出口を作る方法など、複数考えられます。共通するのは、タッチライン際の低い位置で、少ない選択肢のまま受けさせない設計です。
なお、小川諒也選手は今節も相手陣地の深く、ペナルティーエリア付近まで入り込む攻撃参加を続けました。深い位置まで走ることで、相手最終ラインの意識を後方へ向けさせる。相手は守備に人数を割かざるを得ず、ゴール前でマークを掴み切れない状況が生まれやすくなります。
鹿島の守備 ──「良い守備からの良い攻撃」
この試合の鹿島の柱は守備でした。名古屋がロングボールではなく「つなぐ」ことを選んだ場面では、鹿島の前線からのディフェンスがハマります。タッチラインを割らせたり、苦し紛れのロングボールに逃げさせたり。相手の「つなぐ」という選択を、コストの高い選択に変えていました。映像で見る限り、前半17分前後のアグレッシブな守備は象徴的で、特にボランチの三竿健斗選手の潰しがよく効いていました。25分に警告を受ける場面もありましたが、中盤であれだけの運動量を出し、ボールホルダーへ潰しに行き続ける姿勢は、この鹿島の要です。まさに「良い守備からの良い攻撃」が当てはまる戦い方でした。
後半の鹿島は、中央のスペースを狭め、名古屋の前進をサイド方向へ向かわせる場面を増やしました。中を刺すパスを消し、外へ誘導する。ただし、完全にコントロールできていたわけではありません。名古屋はハーフタイムの交代後、鹿島の背後を使う攻撃を増やし、同点ゴールだけでなく、終盤には浅野雄也選手のシュートを関川選手がブロックする決定機も作っています。鹿島の守備を評価しつつ、名古屋の修正も正当に評価すべき後半でした。
名古屋の設計 ── 外から前進する
その名古屋にも、彼らの設計がありました。序盤は無理につながず、シンプルに裏へのロングボールを選ぶ安全第一の入り。そこからの特徴は、ポケットを目指して深くえぐるのではなく、サイドから早めのクロスを入れ続けたことです。前半は山岸祐也選手を一つのターゲットにし、31分には高嶺朋樹選手のクロスから山岸選手がポストを叩く決定機を作りました。相手の守備が整う前にボールを入れ、中の人数が多い場所でこぼれ球や接触からの得点機会をうかがう形です。
後半はマテウス・カストロ選手と徳元悠平選手を投入。ペトロヴィッチ監督も、後半は背後を使う狙いを強めたという趣旨の説明をしています。そして実際に、徳元選手の左サイドからのクロスに原輝綺選手が合わせ、シュートが植田直通選手に当たって同点ゴールが生まれました。外回りのパスが多くても、早いクロスとゴール前への入り、こぼれ球への反応で完結する設計なら、それは弱点ではなく織り込み済みの前提。サイドから継続的にゴール前へボールを供給した名古屋の攻撃は、一つの答えとして成立していたと考えます。
我々の見立て ── 鈴木優磨選手を中央に置く価値
映像で見る限り、前半の鈴木優磨選手は、左に流れる場面や、守備時に左サイドのラインへ入る場面が見られました。そして後半は、より中央の高い位置で基準点になる時間が増えたように見えます。我々の印象では、鈴木選手が中央の前にいることで、ロングボールがしっかり収まります。前で収まるからチーム全体がラインを上げられる。ラインが上がるから、前線に人数をかけた厚みのある攻撃ができる。この試合に限れば、鈴木選手を中央の高い位置に置いた方が、前線でボールを収めて周囲を押し上げる役割を生かしやすいように見えました。
これは好みの話ではありません。前線に「預けられる場所」があるかどうかは、チームの構造を決めます。レオ・セアラ選手と鈴木選手がいる時間帯、鹿島は前線にボールを預ける選択肢を持っていました。そして69分にセアラ選手、87分に鈴木選手が退いた後も、チャヴリッチ選手や徳田誉選手がゴール方向へのプレーを続け、終盤の攻撃圧力を維持しています。
まとめ ── 偶然を得点に変えられる状態を、最後まで維持できるか
- 1.ビルドアップの生命線は「前を向くか、キープするか」の整理。レイオフで前向きを作る仕組みは今節も機能。SBの詰まりは次への宿題
- 2.良い守備からの良い攻撃。前線のプレスと三竿選手の潰し。後半は中央を狭め、外へ誘導する場面を増やした
- 3.名古屋のサイドからの継続的な供給も、一つの設計として成立していた
- 4.前線で収まる基準点の価値。この試合に限れば、鈴木選手は中央が良いというのが我々の見立て
2試合連続のアディショナルタイム決勝点には、当然ながら偶発的な要素も含まれます。ただ、この試合の鹿島は、83分の鈴木選手のヘディング、89分のチャヴリッチ選手のポスト直撃、そして90分以降の連続攻撃と、最後までゴールへ向かう回数を重ねました。劇的な結末を運だけで説明するのではなく、その直前まで攻撃を継続したことも評価すべきでしょう。
2試合の結果だけで、勝負強さが完全に再現可能なものだと断定することはできません。それでも、終盤に交代選手を使って攻撃を強め、セットプレーの二次攻撃まで集中を切らさなかったことは事実です。偶然性を含む決勝点を生かせる状態を、チームが最後まで維持していた。今回の勝利は、そのように捉えるのが適切ではないでしょうか。引き続き、この鹿島を追いかけていきます。